『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』60点(100点満点中)
超大作のわりに、俳優の魅力ばかりが印象に残るのが寂しい
ディズニーランドの『カリブの海賊』をモチーフにした海賊アクション映画。プロデューサーは、手がけた映画の総売り上げが一兆円を超えている、ハリウッド最強の男、ジェリー・ブラッカイマーである。
ブラッカイマー作品と言えば、徹底した娯楽主義であるが、本作も期待にそぐわぬピュア娯楽映画である。サービス精神たっぷりに、我々を楽しませてくれる。
ただ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、”脅威のVFX映像”という触れこみで宣伝されているが、普通に見ていると余りそういう印象は受けない。むしろ、同じ日公開の『ハルク』のほうが、VFXを見せる映画、という感じがする。
だが、ジョージルーカス率いるILMによる本作のVFXが、劣っているという意味では決してない。むしろ、あまりに出来が良すぎて、自然に目に入ってくると行った方が正しい。とくに『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、『ハルク』のように、これ見よがしにCGクリーチャーが動くというのではなく、むしろ背景やアクションシーンの脇役として、さりげない演出として使われているほうが多いので、余計にそう感じる。
むしろ、見所は3人の役者たちだ。頭のネジが緩んだような海賊を演じる、ジョニー・デップの演技は、特にインパクトが抜群で、強く印象に残る。主人公のオーランド・ブルームも、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのエルフ役そのまんまな、美少年ヒーローぶりが、完璧にハマっている。海賊の剣さばきも見事だが、いっそ弓矢を持たせたくなるくらいだ。ヒロインは、『ベッカムに恋して』に出ていたキーラ・ナイトレイという女優で、本作ではブロンドのロングヘアも良く似合い、これだけ強い印象の二人のヒーローの中でも、存在感を示している。
『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』は、上映時間が2時間23分という長さであるが、ほとんどこの3人を追っかけているストーリーなので、少々話の密度が薄い。脇役に、彼らに匹敵するようなキャラクターがいないのも、その原因の1つだ。
ディズニーランドのアトラクションの映画化とはいえ、完全に大人向きに作られた映画。子供たちには、同じ海賊映画(会社も同じディズニー)の『トレジャー・プラネット』のほうがオススメだ。興行的には振るわなかったようだが出来はいい。
米国での『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』は、『ターミネーター3』を軽く蹴落とし1位を奪ったが、日本ではどうだろう。この夏数少ない、続編ものではない大作映画として、どこまで上位陣に食いこめるか。興味深い部分ではある。
まとめとして、『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』は、二人の主演男優を中心に楽しむ、ロマンあふれる海洋映画だ。彼らのファンであれば、間違いなく楽しめるが、大作のわりには、全体的にこじんまりとまとまっている印象も強く、ブラッカイマー超大作ファンの方には、少々不満が残るかもしれない。なお、エンドロールの後に1シーンあるので、慌てて席を立たないよう、お気を付けを。