『ターミネーター3』75点(100点満点中)
これは、まごうかたなき”ターミネーター”だ
あの『T2』から12年を経て帰ってきた、ファン待望の続編。言わずと知れた、SFアクション超大作である。
ジェームズ・キャメロンからジョナサン・モストウ(『ブレーキ・ダウン』『U-571』)に監督が変更、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンが降板、そしてその息子のジョン・コナー役のエドワード・ファーロングも諸般の事情にて降板したため、シリーズとしてのつながりが感じられるかどうかが、ファン最大の関心事といえよう。
そして私が今回、この最新作を鑑賞して感じたのは、これは、まごうかたなき『ターミネーター』だ、という事だった。未来、運命というテーマを、時間を超えたドラマとしてドラマティックに描くこのシリーズ。前2作に共通する独特の雰囲気が、画面の端々に感じられたのである。
そして、そのイメージの中核となるのは、やはり主演のアーノルド・シュワルツェネッガーである。ターミネーターT-800型こそが、彼の最大の当り役である事に異論のある方はいないだろう。
そして『T3』も、やはり”彼”の映画であった。相手役の女ターミネーター、T-X型役の女優さんも、”アーノルドの相手役にいい女優無し”という、一部の声を蹴散らすような素晴らしい美人ではあるのだが。特に、人間離れしたスタイルの良さは、隣に並びたくない度満点である。
なのに、二人が揃った来日記者会見では、誰もがアーノルドの全裸登場シーンの事ばかり聞いていたのである。彼女も全裸で出てくるんですけど、と言いたくなったのは私だけであろうか……。
で、そのアーノルド登場シーンであるが、あの身体で55歳だと言って、驚かぬものはいまい。特に、広背筋の広がりが素晴らしい。だがしかし、アーノルド=伝説のボディビルダーという認識である私の目から見ると、悲しいほどしぼんだなぁ、という印象であった。たぶんその事は、本人が一番良くわかっているのであろうと思うが。彼は、6ヶ月間のトレーニングを積んだと話していたが、出来ればあの天才ビルダーに、あと6ヶ月与えてみたかったと思う。
どんどん話題がずれていきそうなので、映画の話に戻すと、『T3』を見終わって感じるのは、いかに前2作が素晴らしかったかという事である。だが、これはしかたがないと私は思う。
あの2作品は、物語としてきっちり完結していたし、あらゆるアイデア、楽しさ、感動をパーフェクトに描ききった娯楽映画の殿堂みたいな作品であった。アレ以上の面白い続編を期待するのは、どう考えても酷というものだ。キャメロンは、『T2』ですべてをやり尽くしてしまったのだ。そこで降りるなんて、まるで勝ち逃げみたいで、恨み言の1つも言いたくなる。
それでも『T3』は、なかなか良くがんばった。ストーリーのドラマチックさは、確実に前2作に劣ると思うが、アクションシーン、特に大型クレーン車と消防車のカーチェイスの迫力などは、相当なものである。あんな凄いシーンは、近年見たことがないほどだ。
本来、製作費節減のためにカナダで撮影するはずだった『T3』は、アーノルドや監督らのギャラを削ってまでも、ハリウッドでの撮影にこだわった。この場面もCGによる味付けはあるが、実際に400メートルにわたるセットを建設して撮影したものだそうだ。役者の体当りのスタント・シーンからは、この映画にかける意気込みが伝わってくる。
まあ、これ以上私が、ここでくどくどと述べる必要などはあるまい。ファンなら必見、『ターミネーター3』は、12年間待ちつづけたファンへの贈り物である。作り手側と主演俳優の、愛情と意欲を感じられる、骨太のド迫力アクション映画を、ぜひお金を払って映画館で楽しんできてほしいと思う。間違っても、家の小さなテレビモニターなんかで見る映画じゃありませんぞ。