『ハルク』65点(100点満点中)
米軍を素手で蹴散らす、究極のマッチョ映画
アメコミを原作とした、アクション超大作。『ハルク』がほかのアメコミ映画と違うのは、主人公がオールCGという点であろう。つまり、役者が演技をするのは変身前まで。変身後の巨人は、全部アニメである。
そんなわけだから、『ハルク』最大の見所は、『ジュラシック・パーク』以来といわれる、革新的なVFXだ。コミックの中にしか存在しなかった巨人ハルクが、実写の映画でちゃんと動く。現代の映像技術の”凄さ”を、たっぷり体感できる映画である。
ボディビルダーの10倍くらい巨大な筋肉をまとった、ハルクの迫力は半端ではなく、これは究極のマッチョ映画とも言えるだろう。何しろ、主人公のハルクは、素手でアメリカ軍と渡り合うという、範馬勇次郎も真っ青の活躍ぶりである。
この、ハイテク米軍との戦闘シーンは映像的に最大の見所で、これをみると、アメリカ映画は何でもありだなと、しみじみと感じられる。登場する兵器も、最新攻撃ヘリ、コマンチや、ステルス有人戦闘機のF-22、湾岸戦争で大活躍のエイブラムスM1A2戦車など、映画で見るのも珍しいものばかり。反戦活動家のみなさんが非人道的と怒り狂う、クラスターボムまで出てきたのには、驚くやら飽きれるやらである。
これらの、超ハイテク米軍を相手に、究極のステロイドビルダーことハルクが、どんな戦いを見せるか。それはぜひ、お近くの劇場にて確かめていただきたい。こういう映画は、この映像だけで充分金を払う価値がある。ビデオ化を待とうなどという発想は、5.1chのサウンドシステムと、40インチ以上の液晶テレビを持っている方以外はするべきではないだろう。
主人公の恋人は、ハリウッド1の美巨乳をもつジェニファー・コネリーが演じる。もちろん、本作では披露していない。当たり前か。彼女は、『レクイエム・フォー・ドリーム』などをみると、すっかり演技派女優が板についてきた感じだが、『ハルク』のようなお気楽な映画にも出るのは興味深い。
『ハルク』は、他のアメコミの例に漏れず、主人公が心の内側に暗い一面を抱えており、そのへんの心理描写を、途中ウジウジと描く部分があるが、観客のほとんどは、そんなものにはちっとも興味がない、という映画である。だいたい、そういうネクラな部分を描くのは、この手のハリウッド大作映画に似合わない。
まとめとして、『ハルク』は、ストーリーはあまり優れたものではないが、VFXだけは十二分に見応えがある。おそらく、ハルク初心者の観客は、劇中、巨大化するハルクのパンツが破けないかどうかばかりが気になってしまうと思うが、どうやら彼のショートパンツは、ユニクロストレッチ素材並みの伸縮率のようで、その心配は無用である。安心してCGハルクの気持ちいい活躍を楽しんでくるといいだろう。