『バッドボーイズ2バッド』80点(100点満点中)

これぞハリウッド超大作

前作の3倍以上の製作費(なんでも100億円以上とか)をかけて作った、刑事アクションパート2。黒人凸凹コンビが、すかしたギャグをかましながらトンデモなアクションを繰り広げて事件を解決するという、今となってはよくあるシチュエーションのハリウッド映画である。

「能書きは要らない。楽しませてくれりゃいい」という人たちにとって今週見るべきは、この『バッドボーイズ2バッド』で決まりだ。

この映画のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーというひげのおじさんは、手がけた作品(『アルマゲドン』『パイレーツ・オブ・カリビアン』など)すべての興行成績の合計は、なんと1兆円を超える。つまり彼は、大ヒットする映画=大衆が好む映画、のツボを知り尽くしているというわけだ。

そのブラッカイマーが、本腰を入れて製作したこの『バッドボーイズ2バッド』。世の中にはこの手の「お気楽ハリウッド超大作」を毛嫌いする人もいるが、何といっても、これだけ派手なドンパチとカーチェイスは、めったに見られるものではない。製作費は100億円だそうだが、逆にいえばこれだけの映画を、わずか100億円で作れる人間など、世界中探してもほとんどいないのではないか。

劇中、最も目を引くのは豪華なカーアクション。車種はシルバーのフェラーリ。このグッドルッキングなクルマが、『マトリックス・リローデッド』を彷彿とさせる、高速道路を舞台にしたチェイスシーンを繰り広げる。

『リローデッド』が実物大のセット撮影なのに対して、こちらは本物のフリーウェイでの撮影。撮影後の道路の補修費用がさぞ莫大だったであろうと思わせるこの激しいアクションは、個人的には『マトリックス・リローデッド』を越えたかな……と思うほどの迫力だ。TVの予告編でもチラと見れるが、クルマがミニカーみたいにポンポコ転がってくるのをかいくぐりながら、ジョークを言い合うコンビの軽快感といったらない。

この黒人コンビのトークがまた面白い。精神科やカウンセリング、人種問題や死体など、すべて笑い飛ばし、けなしてゆく。タブーなき毒舌ジョークの数々は、物議をかもすほど刺激的。「人種差別的である」「死体に対する畏怖の念が欠落している」との声も強く、人によっては受け入れがたいものがあるところなので、ぜひ注目してほしい。

最初から観客のボルテージを上げっぱなしの映画だが、クライマックスにはもう、「この映画……たしか刑事ドラマじゃなかったっけ?」とぼやきたくなるほどエスカレートした、大きな見せ場が用意されている。これはもはやフルコースというより満漢全席だ。食べきれないほどの圧倒的質量の驚きが、2時間26分という上映時間にぎっしりつまっている。観客も気合を入れて、残さず平らげるつもりで出かけなくてはなるまい。

ちなみに前作は、もちろん見ておいたほうがいいだろうが、誘ったお相手の方が未見だったとしても、ほとんど関係なく楽しめるように作ってあるから安心だ。



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