『マトリックス・レボリューションズ』60点(100点満点中)

ライトなファンにとっては、不満の残る出来だろう

映画業界関係者にとっても『マトリックス』はひときわ特別な存在だ。なんたってマスコミ向けの試写会も一度しかやらないし、入口の荷物チェックは厳しいしで、見る前から「ああ、自分はこれからすごいモノを見るんだ」と、気分が盛りあがる。

もしかすると『マトリックス・リボリューションズ』の一番の魅力は、その部分かも知れない。つまり、「見るまでの間が、とってもワクワクする」という部分。というのも、おそらく『レボリューションズ』は、多くの方が「なんだよ、これでおわりかよ」と、不満を持つような内容だからだ。

知っての通り、『レボリューションズ』は、『マトリックス』『マトリックス・リローデッド』と続いてきた三部作の完結編。だから、最大の注目は、この壮大なストーリーにどう結末をつけるかという一点にあった。だが、『リローデッド』で話を広げすぎたためなのか、『レボリューションズ』で提示される結末は意外とわかりにくく、説明不足な感じがする。

ただし鑑賞後、パンフレットやプレスシート、その他の資料を読みこんで行く内に、私の場合は「なるほど、この結末は悪くないな……」と思えるようになった。このラストは、つまるところ、そういう性質のモノなのだ。

もっと具体的にいうと、テレビゲームの『エンター・ザ・マトリックス ENTER THE MATRIX』は、物語の理解のために重要だそうである。これを未プレイの私などは、ナイオビの心境や、スミスがなぜあんなに大きな顔をしているのかがイマイチ理解しにくかった。

しかし、観客のほとんどは私と同じように、映画の前2作を見ただけで(これに追加して、『アニマトリックス』を見た人もいるだろうが)、『リボリューションズ』に挑む人がほとんどのはず。そうした観客にとっては、ストーリーや結末の深遠な部分はとりあえず置いておいて、アクションSF映画としての、派手さやVFXを楽しめるかどうかも大きなポイントになる。

それについては、前作の『リローデッド』からみて、かなり劣るといわざるをえない。私が前作の『マトリックス・リローデッド』で、「(スゴ過ぎて)もうおなかいっぱい、あとはPART3に残しておいてくれ」と書いたとき、わずかに心配した点が現実になってしまった。

無論、現代の映画のレベルからすればまちがいなく最高峰の映像技術は、それなりに見ごたえがあるが、今回はどうも、非現実的なマシンが動く場面ばっかりで、実感が沸かないのである。これよりは、『リローデッド』で見せた、高速道路アクションのほうが、(現実に我々は高速道路を利用しているので)その凄さが実感できた。

また、仮想世界『マトリックス』での戦いが、今回は大幅に少なくなってしまったので、ネオがサングラスにマオカラーのジャケットで活躍したり、トリニティーが黒のスーツで飛びまわる、あのスタイリッシュなアクションシーンを求める観客には不満が残るかもしれない。モーフィアスなど、今回はすっかりチョイ役になってしまっている。これはストーリーが、もう現実の世界での最終対決という段階に来てしまったので、やむをえない事ではあるが。

そんなわけで『マトリックス・レボリューションズ』は、「わかりにくくて爽快感のない結末」と、「マトリックス世界でのアクションの大幅な減少」という2つの要因のため、関連本を読みまくったヘビーなファンにとってそこそこの満足はあれど、ライトなファンにとっては、イマイチな出来となってしまった。

それでも、これは映画館に出掛けていくだけの価値がある映画である。歴史に残る『マトリックス』の最終章を、何にしても自分の目で見届けておかないと、後悔するにちがいない。



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