『ブラザーフッド』40点(100点満点中)
日本人に響くものはない韓国人専用映画だが、見所はある
チャン・ドンゴン、ウォンビンといった人気スターを主演に据え、本格的な戦闘シーンをちりばめた戦争超大作。本国の韓国では『シルミド』と近い時期に公開され、両者で国内の興行記録を塗り替えていった。
仲のいい兄弟とその家族が、突然勃発した朝鮮戦争によって引き裂かれてしまう。前線に駆り出された兄は、せめて弟だけでも家族の元に無事に返そうと考える。彼は弟を後方任務に就かせる事を条件に、危険な仕事を一手に引き受けるが、肝心な弟との仲にはやがて亀裂が入り……というストーリー。
一言で言えば、公開中の『シルミド』と同様、”戦争をダシにして作った泣き映画”である。露骨な泣かせ演出、オーバーアクト、音楽、それらも同様だ。まあ、こちらは完全なフィクションである分まだ良心的といえるか。似たような要素をもつこの二本は、ともに韓国映画史に残る大ヒットを記録した。きっと同じ客層の人々が、両方ともご覧になったのだろう。
『シュリ』の監督らしく、エンターテイメント性の高いつくり。前半から激しい戦闘シーンが続き、観客の目を奪う。韓国映画史上最高額の製作費がかけられただけあって、そうしたスペクタクルシーンには大作らしい重厚感がある。また朝鮮戦争のちの字も知らないお客さんでも、問題なく楽しめるようになっている。
兄弟の悲劇を2時間30分近くもかけて、たいそうに描いているが、『ブラザーフッド』ははっきりいってお気楽娯楽映画である。そこら中にみられるディテールのほころびや興ざめするバカバカしいストーリー展開が、”戦争の悲劇”たるテーマの重みをどんどん奪っている。
ただの民間人だったはずの主人公が、星を食ったスーパーマリオよろしくムテキマンと化して、敵を(弾切れ無しの)ムテキ小銃で倒しつづけるような姿を見るにいたっては、少しでも真面目な戦争映画を期待していったお客さんは怒り出して帰ってしまうであろう。よって『ブラザーフッド』は、おバカ映画の一種と思って見に行くことが肝要である。
さて、そんな『ブラザーフッド』だが、脇役を含めた役者の個性が生かされ、皆すばらしい存在感を示していることには驚かされる。とくに主演のチャン・ドンゴンの熱演からは、スター独特のオーラが伝わってくるかのようだ。
ちなみにこれは、この映画に限った事ではない。最近立て続けに公開されている韓国の映画をみて私が思うのは、内容はともかく、どれも役者たちが良いということだ。
今、日本ではヨン様こと『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンをはじめ、韓国の映像文化のブームが役者人気中心でおきているが、これには納得できる一面がある。韓国の誇るスターたちには、一種独特のオーラというか、存在感がある。日本では、ずいぶん長いこと映画俳優不在の時代が続いているから、彼らのようなムードある役者が新鮮に感じられるのも無理はない。
『ブラザーフッド』も、残念ながら内容はお粗末というほかないが、ブームに乗って韓国映画のひとつも見てみようという方々ならば、恐らく役者に期待して劇場にやってくるだろうから、ある程度の満足は得られるかもしれない。そのへんが救いである。