『2006年の総括』
はじめに
今年も、お正月のちょいとヒマな時に書く総括の時期がやってきた。私自身の2006年といえば、それまでの年に比べてやや忙しくなり、後半はなかなか試写に出向くことさえできなくなってしまった。
そのため当ページの更新も遅れ気味となってしまったわけだが、2007年はこの点を早く改善し、扱う本数、内容とも元通り以上を目指していきたい。そのための具体的な道筋も考え、すでに手は打ってあるので、徐々にサイトの内容に反映されていくだろうと考えている。
インターネットというメディア、とりわけ個人の手によるウェブサイトは、気が付いたら何の前触れもなく閉鎖されていた、なんて事が珍しくない。私も、利用していたウェブサイトが突然無くなり、大きなストレスを感じた事が何度もある。だから、少なくとも自分のところはそんな事の無いよう、責任を持って長期的に運営していこうと思う。
2006年気合の入った映画
まずは『ホテル・ルワンダ』を挙げたい。実話を映画化したもの、それも悲惨な民族虐殺を扱っていながら、悲壮感を強調することなく、むしろ娯楽性を強調したつくりは珍しい。純粋に面白い作品であれば、たくさんの人が見て結果的に大きな問題提起となる。これほど映画というメディアの特性を生かしきった社会派作品はそうそうお目にかかれない。年間ベスト級と言っても過言ではないだろう。なお、同じ社会派というくくりなら、シャーリズ・セロンが好演した『スタンドアップ』もいい。
『トゥモロー・ワールド』は、DVDが出たら大画面テレビを持っている人はぜひ観てほしい一本。いまや、進化したCG技術は編集の継ぎ目すらも感じさせない。映像の凄さに度肝を抜かれるという点では2006年最強だ。
デジタルで作られた映像ではなく、役者と現場でそれを支えるスタッフの職人芸を味わえるのが『トム・ヤム・クン!』。長まわしのアクションシークエンスの完成度がすごい。
ショックを受けるという意味では『隠された記憶』と『ステイ』もかなりのもの。一年間に何百本も観ている身から言うと、最後の最後まで心に残るのはこのタイプの映画だ。とくに『隠された記憶』は何度も観るか、あるいはネット等で様々な解釈を調べて補完しないとその凄さがわかりにくい作品だから、DVD鑑賞に向いている。
気楽に観られる娯楽大作としては『インサイド・マン』が群を抜いていた。気の利いたユーモア、スリリングな展開、重厚な画面と大人が楽しめる要素もそろっている。無論、若い人が見ても面白いはず。ハリウッド得意のお気楽娯楽ではなく、骨太な本格派の娯楽映画だ。
男が見たら怖くて仕方がない『ホステル』も一見の価値がある。ただしこれは本当に強烈だから、心臓の弱い人や残酷なものを見られない人は絶対に止めたほうがよろしい。
邦画は『イヌゴエ』『ラブ☆コン』のコメディ2本はぜひ観てほしいところ。私はどちらも公開されてから再び観にいったが、2度目も十分楽しめた。『イヌゴエ』はペットと適切な距離感を持っている人が満足できる貴重な動物映画だ。
2006年ダメダメ映画
その映画のことをネタにしていつまでも楽しめる「ダメ映画」ではなく、『ダ・ヴィンチ・コード』のような単なる駄作が多かったのは残念だが、それでもいくつか愉快な作品が見受けられた。
とくに、今年も韓国映画は粒ぞろいであった。彼らがいなければ、06年のダメ界はまったく盛り上がりに欠けるものとなっていただろう。日本の関係各社が、砂上の韓流ブームを追いかけて、やたらと高く権利を買わされていたのは哀れであったが、観客としてはおかげで下記のような間抜けな作品群が楽しめる。ありがたい限りである。
怪物に襲われる場面がギャグになってしまっている『グエムル 漢江の怪物』は、映画自体も十分面白い。ただ、中盤が間延びしているので早送りしたくなるかもしれないが。ともあれ反米風味というスパイスも効いた、年度を代表する一本といえる。
『天軍』も見逃せない。そこかしこに有名作品からのアイデア拝借が見られるのも楽しいし、『グエムル』以上にあからさまな反米描写もさすが。南北朝鮮が合同で核開発するという展開は、その後現実に起きた北の核実験騒ぎを彷彿とさせる雰囲気があり、今となっては大変興味深い。聞けば韓国には、これ以上にトンデモな反日、反米映画が存在するという。2007年、日本の映画会社は勇気をもって、それらを輸入してほしい。
さて、定番のメロドラマとしては『連理の枝』がいい。お定まりの展開に加え、さらなる無茶なオチを加えたチェ・ジウお姫様の主演作。魅力は相変わらずで、2007年も変わらず涙の女王として君臨するのだろう。
日本映画は漫画原作ものが多かったが、『DEATH NOTE デスノート 前編』『デスノート the Last name』の出来は賛否両論であった。ただ、これらはよい悪い以前に、作品にパワーがない。『最終兵器彼女』も同様で、せっかくの有名原作を、後世に残す凄い映画にしてやろうという執念が感じにくい。
ただし『ラフ』は、長澤まさみの超絶ナイスバディをフィルムに焼き付けようという、監督のエロ心が随所に感じられ、好感の持てるつくり。彼女には07年も引き続き長澤会を率いて、沢尻会との抗争に精を出して頂きたい。
2007年早々には、日本映画界に物凄い作品が登場する。2006年に見た作品の中でもっとも面白かった映画ながら、公開が07年1月なので紹介できなかったが、ぜひ楽しみにしてほしい。また、06年はいまいちぱっとしなかったが、2007年から北京五輪にかけて、中国の映画界が何か仕掛けてくることも間違いない。こちらにも大いに期待したい。