『2005年の総括』

はじめに

お正月は映画業界もお休み、というわけで、この週は新しい公開作品も無い。しかし、それでも毎日、このサイトに来てくれる人はたくさんいるわけで、そんな皆様の暇つぶしになればと、毎年書いているのがこの総括である。

思えば本サイトをOPENして約2年半、今でも右肩上がりにアクセスが増えているというのは、大変嬉しいことだ。これからもコンセプトを変えずに、誰にも気兼ねせずに、しかし責任を持って、ユーザーのためになる情報を発信していきたいと思う。

何しろ皆さんは、貴重な時間を割いて映画を観に出かけるのだ。そして、さらに別の時間を割いて、このサイトを読みに来てくれている。だとするならば、私はそれに見合うだけの情報や、面白さ等の娯楽要素を提供しなくてはならない。少なくともここで紹介する映画に関しては、「読んでから観る」方が面白くなければ、このサイトの存在価値など無い。

そんなわけで、今後もこのサイトは、筆者の自己満足のためでも、鑑賞メモ代わりでもなく、読者の満足を第一目的として運営していこうと思う。なんといっても、もっともっと映画ファンを増やせなければ、この仕事(映画批評家)をしている意味は無いのだから。

2005年気合の入った映画

バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション
ほぼ完璧な映画。


チーム★アメリカ ワールドポリス スペシャル・コレクターズ・エディション
癖になるお下品さ。


ティム・バートンのコープスブライド 特別版
泣けるファンタジー。

何度も紹介しているが、個人的には『バタフライ・エフェクト』をベストワンに挙げたい。この作品の、よく練り上げられた脚本を評価する人は、プロアマ問わず多い。以前、ある映像関連の専門家に感想を聞いたときも、そう言っていた。「今の邦画界には、これだけの脚本を書ける人はいない」と嘆いていたのが印象的だった。しかし、別に落胆することはない。アメリカ映画界にだって、これほどの脚本を書ける人は、ほとんどいないのだから。

『セルラー』も相当に面白い一本だ。テンポの良さと、魅力的なキャラクターは、サスペンス映画にとって、傑作の必須要素だ。一度観始めたら、最後まで目が離せない。年末年始のお休みに、一家そろって観るのにも適している。

その他洋画では、トラウマになりそうな海洋恐怖映画『オープン・ウォーター』や、お下劣社会派人形劇『チームアメリカ☆ワールドポリス』、タイの本物アクション『7人のマッハ!!!!!!!』あたりは、じつに気合が入っている。どれも個性豊かで、観ておいて損の無い作品ばかりだ。

また、2005年は洋画大作も当たりが多い年だった。『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』、公開中の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』、そして『キング・コング』と、どれも素晴らしい。100億円単位のお金をかけた作品ばかりだが、どうやら壮大な無駄遣いとは、ならなかったようである。

邦画では、ファミリー向けの『HINOKIO ヒノキオ』、ネット発アキバ系恋愛映画『電車男』、超人気漫画の映画化『NANA ナナ』あたりは、なかなか見所がある作品だった。とくに『HINOKIO ヒノキオ』は、あまり話題にはならなかったが、とても良い女優が出ていたし、VFX技術の進歩にも驚かされるものがあった。

アニメ作品は、全体的に不調な印象。実写アニメ『コープス・ブライド』くらいしか、印象に残った作品が無かった。

とはいえ、2作品が公開された『映画 ふたりはプリキュア』は、作品に潜在的なパワーを感じられるシリーズといえる。来年の、とくに日本アニメには、世界を驚かせるような、オリジナリティあふれる長編を期待したい。


2005年ダメダメ映画

ローレライ スタンダード・エディション
ボールが命取り


マンガ嫌韓流
今年を代表する一冊?

昨年の『デビルマン』のように、歴史を変えるほどの作品は無かったとはいえ、『あずみ2 Death or Love』『鉄人28号』あたりの小粒なダメ映画はいくつか公開された。これらの邦画ダメーズたちに、『ARAHAN アラハン』など、韓国映画が立ち向かうというのが、韓流の年たる2005年の基本構図といえるだろう。

2005年の邦画といえば、忘れてはならないのが、戦争、軍事モノの大作。『ローレライ』『亡国のイージス』『戦国自衛隊1549』と、ダメ臭漂う作品群が勢ぞろい、まさに豪華絢爛だ。『男たちの大和 YAMATO』も含め、これらに共通するのは、「見た目はそこそこだが、脚本がイマイチで、筋のとおった主張もない」といったところか。

それなりにお金をかけている大作ばかりだから、ご商売の面で損をしたくないのか、どうも内容が弱気で、無難な方向へと傾いているように思われる。しかし、今年は『嫌韓流』なんて本が大ベストセラーになったほどなんだから、世間を揺るがすような、強烈な保守的主張をするエンタテイメント作品があっても良かったのではないだろうか。

逆にいえば、名をあげたい映画製作者にとって、今は大きなチャンスである。社会問題や外交問題を題材にして、正論を主張した万人向けのエンタテイメント作を作れば、大きな支持を得られる可能性がある。北朝鮮による拉致問題や、中韓との領土問題、日中中間線沿いの資源問題を題材にした、半フィクションの軍事アクションがあったら、何を差し置いても見てみたい。




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