2004年の総括
はじめに
早くも2月になろうかという今日この頃だが、遅れ馳せながら昨年2004年に公開された映画を総括したいと思う。このサイト「超映画批評」は週末の映画選びに特化したサイトであり、こういう文章を載せるのは少々趣旨に反するものがあるので、例によって暇が余っている方のみ、お付き合いいただけたらと思う。
2004年 気合の入った映画
筆頭に『下妻物語』をあげたい。私は2003年の総括で、日本映画界に対し、「日本映画にしか出来ない事を、大衆向けの娯楽作品で提示してほしいと切に願う」と書いたが、それはまさにこの『下妻物語』のような映画が出てきてほしいという気持ちで書いたのだ。公開後も改めて見に行ってみたが2度目でも楽しめたし、観客の入りも大変よかった。このような映画がヒットして、続々作られるようになれば業界の未来は明るい。
次にあげるのは『トロイ』だ。この超大作は今年を代表する一本といえるわけだが、ブラッド・ピットの魅力、あれだけ壮大な原作をコンパクトにまとめた製作側の手腕、どちらもお見事。また、何より音楽がよかった。映画を見た満足感という意味ではこれが2004年のナンバー1ではないか。私も2度見に行った。
タイからは『マッハ!』というスゴイ映画がやってきた。これは間違いなく2004年のアクション映画ナンバー1だ。恐らくこの映画を見て衝撃を受けたのは、観客よりも作り手のほうではないか。トニー・ジャーの運動能力の前ではハリウッドの資金力も、最新技術でさえも無力だ。こんなに恐ろしい話はない。
もうひとつアクションジャンルからは『トルク』を推したい。公開延期を繰り返した末、あっというまに公開終了したので見た人も少なかろうが、こんなに楽しいバイクアクション映画はない。能天気に楽しめる90分ムービーとしては最強だ。これを劇場で見れた人は、ラッキーだったというほかない。私の場合、誰を誘って行こうかと思っていたらいつのまにか上映終了していた。いとあわれ。
同じワーナーの映画で、似たようなおバカ系の魅力がある映画といえば金城武の『ターンレフト ターンライト』だ。こちらは『トルク』に輪をかけて短期間で終了した。これなど大画面でないとイマイチであろうから、見逃した方はお気の毒であった。
映画界も韓流にゆれた一年だったが、ほとんどは幼稚でほほえましい作品ばかりであった韓国映画の中で、郡を抜いてインパクトが強かったのが『オアシス』だ。普段は冗談半分で語れるマヌケな韓国映画も、これだけは別格だ。未見の方がいたら、ぜひ見てほしい。こいつは本当にすばらしい映画だ。
そして、なんといっても『ソウ/SAW』は凄かった。これ、2004年で一番怖い映画であることは間違いない。エンタテイメントとして非常によくできていて、誰が見てもその出来のよさに舌を巻くこと間違いない。
その他、アニメは日本の誇る3監督が揃い踏みした割には『イノセンス』以外の2作品はダメであった。日本映画は『東京原発』など、意外にも実写のほうが勢いのあった1年となった。
まあ、この年を代表する気合の入った映画というとこんなところか。このあたりは、誰が見ても満足できると思う。
2004年 ダメダメな映画
これはもう、『デビルマン』につきる。この世にこんな映画を作ってしまう人たちがいるという事だけでも奇跡のようなものだ。日本映画史に燦然と輝くダメ映画として、末永く君臨することであろう。思えばあのころ、このページのアクセス数も連日通常の2倍という、大入り満員状態が続いていたことを思い出す。2005年もこいつに負けないくらいのトンデモ映画が出てくるのだろうか。
横綱『デビルマン』の圧倒的なパワーの前に完全に吹き飛ばされた格好なのが『CASSHERN/キャシャーン』だろう。こちらも散々な出来であったが、あまりにも「ハッピーバースデー、デビルマン!」のインパクトが強すぎて影が薄くなってしまった。あの瞬間、『キャシャーン』はダメ映画界チャンピオンの座を転げ落ちたのだ。
また、『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』も忘れがたい一本だ。ただこれは、狙ってやっている様子がちといやらしい。いや、それ以前にこの映画は確か、2004年の邦画の興収ランキングのTOP10くらいに入っていたはずで、その事実のほうが恐ろしい。キャシャーンもかなり大商いだったそうだから、世の中とは摩訶不思議である。
『コンクリート』という映画もあった。こちらもずいぶんと話題になった記憶がある。これはダメ映画というよりは、題材の重要性を読み誤った作り手側に、ユーザーが強く拒否反応を起こした例といえるだろう。さんざもめて、ようやく上映した後は、話題になっていたことが嘘のように忘れ去られた。
『くりいむレモン』も、往年のエロアニメとはずいぶんと面白い題材に手を出したなという気はしたが、中身は中途半端でよくなかった。世の中のオジサマファンはがっかりしたことであろう。
しかし、こうしてみるとまたもや邦画ばかりではないか。これは、一部の映画人のセンスがあまりに世間離れしているからで、今後もこのようなお茶目な作品は定期的に出てこよう。このセンスに対抗できるのは、いまやお隣の韓国くらいなものだ。たとえば、『チューブ/TUBE』は凄かった。こんなマヌケな映画はそうそう作れるものではない。
とはいえ、ダメダメ界ではさすがの韓流も分が悪いようだ。なんといっても2004年の日本にはデビルマンがいる。今日もどこかでデビルマン、明日もどこかでデビルマン。