『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』80点(100点満点中)
監督:デヴィッド・カー 出演:ローワン・アトキンソン オルガ・キュリレンコ

≪ローワンのファンなら爆笑必至≫

前作から7年、誰もが忘れていた続編第三弾『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』は、ベテランコメディアンの風格を見せつけた、余裕綽々の爆笑傑作スパイアクションであった。

間抜けな職員のミスにより、イギリスの秘密情報部MI7エージェントの個人情報が全世界に流出してしまった。やむなく彼らは情報が漏れていない、引退したエージェントを招集する。ところがその一人で、今は小学校で怪しげなスパイ技術を教えているジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)がさらなるミスを犯したため、わずかな残存エージェントも全滅してしまう。

限られたスキルしか持たないおバカスパイが、ハチャメチャな行動で回りを引っ掻き回しながら、なんとなく問題を解決してしまうシリーズ第三作。前作は7年前、一作目は03年ということで、ほとんどの人は見たこともないかもしれないが、別に無理して復習する必要はない。本作から見ても10分でキャラクターのお約束をつかめる、万人向けのコメディー映画である。

ローワンは、ミスタービーンなどおとぼけキャラを演じさせたら右に出る者がいないベテランだし、ギャグのキレに老いは一切感じさせない。むしろふざけ度合いがエスカレートして、昔より面白くなっているんじゃないかと思うほど。せっかく集めた年寄スパイを、意図せず脱落させる冒頭のギャグシーンから、腹が痛くなるほど笑わされた。コメディー映画は笑うために見に行くのだから、笑えるという特長は何より本作の高得点に寄与するものである。

今回は、IT業界の旗手たる実業家と、アナログきわまるイングリッシュが対照的なキャラクターとして激突するが、この構図もわかりやすい。電気自動車などいっさい信用せず、ガソリン車で出発するシーンは、むしろアナログ派のほうが恰好いい。この場面では、車好きで知られるローワンは自前のアストン・マーチンを持ち込んで撮影している。

また、お茶らけたバカ映画の衣をまとっているが、なかなか骨太な批判精神を持っているあたりがイギリス映画らしい。製作もつとめるローワンは、英国首相をアル中のバカ女に設定、アナログ対デジタルがテーマの映画だが、それ以前に英国そのもののアナクロ性を皮肉って見せる。

本物ボンドガールのオルガ・キュリレンコがヒロインに起用されているあたりも心憎い。彼女はとてつもなくスタイルのいい女優で、その魅力たるや本家007のときよりもこちらが上かと思うほどだ。

VRでロンドンの街をめちゃくちゃにするシーンは本作最大の笑いどころで、あんなものをみてよく共演者やスタッフは笑わずにいられるなあと感心させられる。いや、実際は笑ってNG続出だったかもしれないのだが。



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