「エイリアン:コヴェナント」45点(100点満点中)
監督:リドリー・スコット 出演:マイケル・ファスベンダー キャサリン・ウォーターストン

「プロメテウス」の続編

SFホラーの古典、エイリアンシリーズの生みの親、リドリー・スコット監督は、なんとかこのシリーズを復活、発展させようと頑張っているが、いまのところその努力は空回りしているように思われる。

人類初の大規模宇宙移民船コヴェナント号は、冷凍睡眠している2000人の入植者と胎芽を乗せ植民惑星オリガエ-6に向かっていた。ところがトラブルで船長らが殉職。急きょ目覚めさせられ船長代理となったオラム(ビリー・クラダップ)の案で、オリガエ-6より手前にあり、より植民惑星に適した環境の惑星に向かうことにする。

「プロメテウス」の純粋なる続編なので、その後の物語がコヴェナント号のクルーの視点から描かれる。あの後何が起きたのか、前作のヒロイン、エリザベス・ショウはどうなったのか。アンドロイドのデヴィッドは? というわけである。

本作でも、どこか初代ヒロインのリプリーを思わせる女主人公が出てくるが、これがどうしようもないおバカさんで失笑を買う行動をとるので、まったく見た後に感動が残らない。

それより目立つのが、フェイスハガーなどおなじみのエイリアンと、アンドロイドのデヴィッドだ。初期作品における人間賛歌のテーマが好きだった人は、これでまずガックリ来る。初期作品ではアンドロイドも人間味があったり感動的な死にざまを見せていたが、この新シリーズでは気味の悪い機械的扱いであるし、エイリアンは言わずもがな。こういう存在が人間以上に目立ってしまうようでは、もはやシリーズとしてのコンセプトが180度異なるといっても過言ではあるまい。初期の作品を好きな人は、間違いなくこの新シリーズは気に入らないだろう。

宇宙船の造形やインテリア、質感だとかは、作中の時代的にこのあとに続く一作目のそれをほうふつとさせる作り。何も知らない人間が卵を覗き込むとフェイスハガーが生まれてコンニチハ、のパターンなどはもはやギャグに近いお約束だ。

こういうファン向けシーンが多数あるだけに、根本的なコンセプトが変わっている点はよりちぐはぐな印象を受ける。

そもそもエイリアンの起源とか正体とか、そんなものに興味があるのはリドリー・スコット監督自身くらいなもので、ライトなファンにとってはそれほど知りたい話か? と思ってしまう。もう少し熱心なファンでも、プレデターと戦っていたあの映画のネタくらいでもう、起源うんぬんについてはスッキリしてしまっているのではないか。いまさら一作目の前日譚で3部作も作る、そのニーズがそもそもあるのか疑問である。

戦闘の面白さとしては2、サバイバルホラーとしては1という二大巨頭がある中、これ以上変化球的なエイリアン映画を何本作っても、両者を越えられるとは思えない。ならば2の熱さと1のスリルを併せ持ったものを、最新の映像技術の力でもって目指すしかないわけだが、それには人間賛歌のテーマが不可欠に思える。

あまり高い評価が得られていないこの新シリーズを、このあとどう盛り上げていくのか。深刻な岐路に立たされていると感じざるを得ない。



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