「お嬢さん」60点(100点満点中)
監督:パク・チャヌク 出演:キム・ミニ キム・テリ

生々しいエロス

サラ・ウォーターズのミステリ「荊の城」を「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督が映画化した「お嬢さん」。高い評価を受ける原作だが、それだけでは少々アピールにかけるところを、舞台をヴィクトリア時代のロンドから日本統治下の朝鮮半島に変更したことで、我々日本人にとってもとっつきやすい作品となった。

1930年代の朝鮮半島。少女スッキ(キム・テリ)は詐欺師(ハ・ジョンウ)らに育てられた。彼女は日本人富豪の令嬢・秀子(キム・ミニ)の家政婦として屋敷に忍び込み、詐欺師と彼女を結婚させることで財産をのっとる計画を知らされる。優秀なスッキは、首尾よく秀子の寵愛を受けるようになるが……。

原作のストーリーなどはあまり変えず、舞台だけを移したというこの映画版。スッキと令嬢、主演二人それぞれの激しい官能シーンが多々あるため、日本でもR18+指定となっている。

ナチュラルな体つきのキム・ミニと、若くてスレンダーだけれど胸だけ大きい少々ジャンクな身体のキム・テリ。この二人の持てるすべてが同じスクリーンで堪能できるのは、男性目線では中々の至福といえる。パク・チャヌク監督はバイオレンス描写に定評があるが、この手の演出も見事なものだ。

作品の出来とは全く関係ないが、個人的にはホン・サンス監督と不倫真っ最中のキム・ミニの濡れ場は、時節柄なかなか生々しいものがあった。我ながら見方を誤っている今日この頃である。

さて、こうしたエロティックシーンが本作の大きな見せ場であることは疑いない。しかも女性が見ても不愉快でない仕立てであるために、本作は観客から高い評価をうけている。大事なのは、こうしたエロスが決してライトだからではなく、ディープな変態世界を描いているのに女性客に不愉快な思いをさせていないという点である。これは、類似の作品を作ろうという人にとっては参考となるだろう。

映画は3部だてで、「藪の中」的な二転三転のミステリ物語になっている。各部にそれぞれ驚きの仕掛けはあるのだが、テンポがゆっくりで繰り返しも多く、鮮烈な驚きを畳み掛けるタイプでない。とくに最後の第3部は後日談的な色合いが濃く、消化試合の印象もある。

日本語のセリフを、普通に通じるレベルまで練習した韓国の俳優たちの努力には頭が下がるが、それでもネイティブ発音とはかけ離れているので、我々日本人が見ると混乱する。はて、この人は日本人の役だったか、それとも日本語を話している朝鮮人の役か、一瞬戸惑う。いっそ吹き替えにしてくれればいいのに、とも思う。

さて、ミステリなので真相について詳しくは書かないが、仰天さとまっとうさを兼ね備えたオチ。耽美的のみならずこれだけ変態的な内容なのに不快感はない。不思議な世界観を作り上げたものだと感心する。

 
荊の城 上 (創元推理文庫)
サラ・ウォーターズの原作小説。
▼『超映画批評』全文検索
Google
  Web movie.maeda-y.com   


連絡は前田有一(映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.