「グレートウォール」75点(100点満点中)
監督:チャン・イーモウ 出演:マット・デイモン ジン・ティエン

チャイナマネーの力

「グレートウォール」はまごうかたなき中国プロパガンダ映画の超大作だが、その出来たるや隙のないまさにお手本というべき傑作であり、その点は高く評価せざるを得ない。

弓の名手で傭兵のウィリアム(マット・デイモン)は、仲間とともに黒色火薬を求めて中国大陸にやってきた。彼らはやがて異民族に追われ万里の長城の警備隊に助けを求める。完全武装の中国軍の大軍勢に圧倒されるウィリアムらは、かれらが60年に一度遅い来る、饕餮(とうてつ)なる獣への迎撃準備をしていることを知るのだった。

万里の長城を「人類を守ってきた最後の防壁」と位置づけ、中国伝統の怪物=饕餮と決死隊のド派手なバトルの連続で見せる熱いストーリー。

チャン・イーモウは五輪開会式を手がけるなど、中共政府にも好意的な大作を手がけることの多い映画監督。実力は折り紙付きで、本作でも完璧なエンターテナーとしての力を見せつける。

103分と短めの上映時間に巨大な見せ場を連続させる、太く短いコンセプト。製作費は潤沢なのに、惜しむことなく戦力を一括投入する。実に潔い横綱相撲を味わえる。

特に素晴らしいのは最初の長城防衛戦。ばかげた人数の中国軍が、まるで北朝鮮のマスゲームのような完璧な統制のもと、奇想天外かつ常軌を逸したスケールの総攻撃を仕掛ける。

敵の饕餮もそれらを上回るほどの数と戦闘力で攻めてくるが、中国兵たちは全く動じない。死を覚悟した数百万の軍勢が、末端の兵士に至るまで鬼神のような奮戦をみせる。なるほど、60年間も準備したに値する、これはものすごい戦いだ。

「統制」と「覚悟」は関連する要素であり、その両者を、それも凡人にはとても及ばぬハイレベルなそれを擬似的に味わえる。これぞ集団戦闘の白眉というべき名場面である。

ここにある種の客人、傍観者として参加することになる欧米人の二人も、素性はよくわからぬながらもなかなかの奮戦を見せる。彼らは観客の一次的感情移入先なので、これも快い。その活躍を認められ、やがて共闘する展開もたいへん盛り上がる。

とてもかなうはずのない化物が相手だが、偶然にも彼らがその弱点を発見するという、新参者でも認められる理由付けもちゃんとある。

「グレートウォール」は、物語を盛り上げるために必要なことには、ことごとく布石を売ってある。シンプルかつそつのない演出。これだけの大作なのに、完璧にコントロールが効いている。こういう映画は見ていて気持ちが良い。

現場の名もなき人間たちの奮戦と犠牲と対比して、中央のお偉方の堕落ぶりも描かれる。現場マンセー労働者マンセーは、いかにも中国大衆向けのプロパガンダ映画の特徴である。さすが、この監督は愛国・愛郷心の鼓舞の仕方というものを熟知している。

なにしろ本作は、エンタメ映画としての面白さが半端ではない。こういうものがハリウッドとの合作映画としてこれからどんどん全世界に公開されてゆく。恐るべしチャイナマネーのパワー、である。

 
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