「暗黒女子」60点(100点満点中)
監督:耶雲哉治 出演:清水富美加 飯豊まりえ

美少女が独特の世界観で繰り広げる残酷劇

突然、幸福の科学へ出家することを発表した清水富美加。ここ最近、心が折れるような残酷系の映画撮影が続いたことが引き金となったなどと報じられているが、それが真実なら間違いなく「暗黒女子」はその一本であろう。

聖母マリア女子高等学院の経営者の娘で学園の人気者だった女子高生いつみ(飯豊まりえ)が屋上から落下死した。この事件、もしくは事故をめぐり、いつみが主宰する文学サークルの面々はそれぞれ独自の見解の短編小説を発表しあう。いつみの跡を継いだサークル会長の澄川小百合(清水富美加)は、メンバーそれぞれの視点や犯行説が矛盾に満ちた点を指摘しつつ、不敵な笑みを浮かべるのだった。

秋吉理香子によるミステリ小説を映画化した本作は、このサークルにおける短編小説の発表を、章立てで繰り返す構成となっている。それぞれが回想ドラマのていで、同じ役者、同じ登場人物によって作られる。唯一違うのは、いつみの死の真相部分、つまり犯人ということになる。

目撃者がそれぞれの視点から見た真実を語る式の矛盾解決系ミステリーはよくあるが、本作のそれはあくまで創作物、小説なのでいったいどこまでが真実なのかわからない。だから真相を予測するゲームとしての面白さ、純度が下がるのは否めない。

それでも、書いてる女の子によって異なる文体が再現ドラマ部にも反映されて、同じ話を別角度から繰り返し見ているだけなのに飽きることはない。

ただそれも私が男性で、美人揃いの女の子を見ているからという点もあるので、女性が見てどう思うかはまた微妙でもある。少女たちは同じ制服を着ているが、描きわけをそうとう工夫して行っている節があるので混乱はしない。

清水富美加は、耽美的なこの女子高でも異様な存在感を放つ狂言回しを演じている。常に気味の悪い微笑みをたたえ、異様に丁寧な言葉遣い。一歩間違えばギャグ方面にはみ出しかねない世界観を、その迫力で押さえつけ、支えている。キャリアの代表作となるであろう一本といえる。もうキャリアは終わってしまったが……。

まとめとして「暗黒女子」は、ミステリときれいな顔の女の子が好きな男性全般にまずは向く。最後まで飽きずにみられるし、真相の驚きもまあまあだ。あとは登場人物と同世代の若者たちも楽しめよう。それ以外の人は、よくよく考えて決断するとよい。

暗黒女子 (双葉文庫)
原作の文庫版が出ています。
全部、言っちゃうね。 ~本名・清水富美加、今日、出家しまする。~
この軽いタイトルがなんとも笑えます。


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