「キングコング:髑髏島の巨神」55点(100点満点中)
監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ 出演:トム・ヒドルストン サミュエル・L・ジャクソン

オタク製怪獣映画

当サイトではずっと指摘しているようにハリウッドでは今、強いヒロインが流行している。個人的にはもうそれも終わりだろうと思っているが「キングコング:髑髏島の巨神」もそんな流行品のひとつ。囚われの姫君の代名詞のようなキングコング映画も2017年に作れば真逆のカタチになる。

コンラッド(トム・ヒドルストン)は、未知なる生物を探すためパッカード(サミュエル・L・ジャクソン)ら軍人を巻き込み未踏の地「髑髏島」へとヘリ部隊で向かう。島を破壊するような乱暴な調査を開始すると、彼らの前に巨大すぎるキングコングが出現、部隊は激しい攻撃を受けるのだった。

中国資本に買収されたレジェンダリー・ピクチャーズによる、今年公開される超大作の一つ。

本作はベトナム戦争映画に怪獣映画をかけあわせるコンセプトで作られているが、あまり成功しているとも、新鮮味があるとも思えない。

冒頭、これまでのコング映画の恨みを晴らすように天敵の航空機相手に大暴れする場面があるが、これがまずいけない。

航空戦力にも負けないコングを見せることで意外性を出そうとの狙いにこだわり過ぎた結果、至近距離まで無防備にヘリ軍団が近づいていくリアリティゼロな戦闘シークエンスになってしまった。お前たちの機銃の射程距離は20メートルか。

立派な軍人たちが指揮する攻撃ヘリが、次々とコングのリーチに入って叩き落されているのを見ると、観客としてはドッチラケである。後々生きてくる指揮官の異常性を演出したい気持ちもわかるが、それなら他にやりようがあるというものだ。

サミュエル・L・ジャクソン演じるこの指揮官だが、彼がコングを付け狙う動機づけおよびキチガイ度合いが弱いので悪役としても中途半端。

ただ、このキャラクターが出ているおかげで後半の転調に成功しているのも事実なので、決して悪いことばかりではない。

そんなわけでこの映画は前半と後半で全く違った視点となり、二本のシリーズ映画を一本で楽しめるようになっている。エンタメ映画としてのサービス精神はきわめて旺盛で、見せ場もたくさんある。驚くような怪物が出てきてコングとバトルを繰り広げる。

新鋭ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督は自他共に認めるオタククリエイターで、趣味全開の怪獣映画としてこのシン・キングコングを作り上げた。

なおこの怪獣映画シリーズは今後いくつも作られる予定となっている。今回のコングは巨大さも神々しさも、次回作でゴジラと戦うにふさわしいものがあり、大いに期待を高めてくれる。対象年齢層も小学中学年くらいからいけそうだし、春休みのお供とするには、まあまあな選択肢といえる。

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B級まで含めたら無数にあるわけですが、やはりまずはこのあたりからいかが。


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