「いきなり先生になったボクが彼女に恋をした」70点(100点満点中)
監督:朝原雄三 出演:イェソン 佐々木希

好感度高いレトロ風味ロマコメ

福山雅治は、結婚後に主演映画その他で苦戦していると聞く。原因は言うまでもなく結婚によるものだ。いまどき"結婚"がファンの支持率にマイナスな影響を与えるタイプの芸能人というのも逆にたいしたものだが、もし女優でそれを一人あげるとすれば佐々木希ではないか。

恋人に振られ、沖縄出張中に職場まで失うなどさんざんな目に合っているヨンウン(イェソン)。そんな彼を救ったのは、たまたま知り合った地元の語学学校の校長だった。ほとんど無理やり韓国語教師にさせられたヨンウンは、クラスの生徒で訳ありなシングルマザーのさくら(佐々木希)に思わず目を引かれるが……。

佐々木希も、言ってみればファンを嫉妬させるタイプの美人。それはスターという意味でもあるので、きっと彼氏か何かがいても、存在を公にしにくい立場にあるのではないか。だから──かどうかは知らないが、近年は子持ちの役柄を演じることが多い。何かの地ならしだと予想するが、とりあえず今回も沖縄で一人頑張りシングルマザーである。

と同時に、韓国のアイドル、イェソンを相手にしたロマコメのヒロインというわけだが、こういう役をできるのが、アラサーでもアイドル感を残す佐々木希ならではといったところ。責任感ある母親としての顔を表現しつつ、純朴な韓国語教師と仲良くなっていく物語をごく自然に説得力ある形で演じている。

当サイトでは日本でほぼ唯一、美貌とスター性と演技力を持つ女優だと注目してきたわけだが、それにしても本当に上手くなったものだ。少し前は見た目が良すぎて普通の女性を演じると違和感を感じさせ、それが演技面での低評価(多くは誤解と批評眼の無さに基づく)に繋がっていたりもしたが、本作ではその弱点すらも克服しているように見える。美貌が弱点というのもおかしな話ではあるが。

本作では、登場時はちょっと驚くくらいぽっちゃりしていて、ああ美人でも太るんだと新鮮な驚きを得たりもできるが、それはともかく相変わらず色は白い。沖縄にあんな白い子がいるわけねえだろとか、お前は地下迷宮で生活でもしてるのかと言いたくもなるが、この映画のいい具合のゆるさ加減は沖縄の魅力でもあるので特に問題はない。また、韓国映画らしい昭和風の古臭い演出とマッチしている点が面白い。たとえばヒロインが襲われるシーンも、沖縄調の音楽とマヌケな笑いで中和して、とげとげしさを完全に排除している。

そんな朝原雄三監督による確信的ギャグ演出は、主人公二人をとりまくステレオタイプな善人キャラたち、甘々な内容、まぬけなSEなど、レトロムード満点。きわめつけは時系列を一気に戻るときの、テープを巻き戻すような演出。いまどきそれかよと突っ込めること請け合いの、心地よくも懐かしい笑いを堪能できた。

過激なシーンは一切ないので、うぶなカップルのデート用途にもいい。主演のイェソンがぱっと見イケメンというタイプではなく、おどおどした真面目っぽいルックスなのが好感度大で、男性客にとっても共感しやすくていい。佐々木希は対照的に異様なまでの美人だし、前述したように嫉妬させる系女優なのでこういうタイプの役者の方がバランスがとれていい事がわかる。

基本的には主演それぞれのファンにとってどちらも楽しめるスタームービーとなっているが、両者の魅力が沖縄のなんくるないさ的な世界観の中で遺憾なく発揮されており、その他の人が見ても十分に楽しめるであろう出来。

今回、佐々木希は韓国語セリフも器用にこなしている。邦画にとどまらないスケールの女優だし、これだけいい作品を連発しても大根などと評する素人が多いのだから、さっさと見切りをつけてハリウッドはじめ海外市場に打って出たほうがいい。「いきなり先生になったボクが彼女に恋をした」も韓国はじめアジアで公開してみたらいい。きっと各国で暖かく迎えられることうけあいである。

かくしごと
コメント欄をみると、この記事の正当性がよくわかります。


連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.