「ゴーストバスターズ」70点(100点満点中)
監督:ポール・フェイグ 出演:メリッサ・マッカーシー クリステン・ウィグ

女性に変更した必然性が感じられる

80年代を席巻したコメディーアクションの再会となる新「ゴーストバスターズ」は、製作サイドの問題で多少もたついたものの、なかなかの出来栄えで登場した。

コロンビア大学の物理学者エリン(クリステン・ウィグ)は、旧友アビー(メリッサ・マッカーシー)との幽霊発見騒動によってせっかくの出世のチャンスを失ってしまう。しかし、幽霊じたいは本物と確信した彼女ら4人は、超常現象の調査会社を立ち上げるのだった。

本国では名うてのコメディアン女優4人による女性版リメイクは、彼女たちによる序盤のギャグが日本人にもばっちり届くおかげで、すぐに物語に没頭できる。80年代のSFXっぽいスペクタクル演出やおなじみのテーマ曲、マシュマロマン等々によって、往年のファンもなじむことができるだろう。また、前作出演者によるカメオも多数あるが、気づかなければそれはそれでなんてことない扱いなので好感が持てる。

ゴースト捕獲・バトルシーンは、悪いやつらは無礼講で撃ちまくれ、ぶち殺しまくれのハリウッド式とはちょいと異なるひねりが加えられている。このあたりも、主人公の性別が変更されたゆえ、なのだろう。

ひねりといえばこの映画には、頭が空っぽのイケメンマッチョな男が登場する。後半はこの男を助けるために、リケジョ軍団が奮闘する流れになる。見た目だけはいいがあんなに中身のないバカ男に、オバサン4人が夢中になる展開は、正直言ってとてもキモい。

だが、そこで私たちはハッと気づくのである。

おバカな金髪巨乳ヒロインを、さしたる理由もなくマッチョ男が救いに行くアクション映画の、これはパロディなのだと。我々男たちは、こんなにも非現実的でバカバカしいものを喜んで見て(作って)いたのだと。

「ゴーストバスターズ」の男女逆転の構図は、そうしたハリウッドの当り前を、チクリと刺しているのである。当たり前すぎて疑問にすら思わなかった、そんな男たちの傲慢さに、こういうスマートなやり方で肘鉄をくらわす。実にセンスがいいし、これなら頑固な男も女性の活躍を素直に受け入れられるというものだ。

今年は大統領選があるから、民主党シンパの多いハリウッドでは女性が活躍する映画が多い。中には女性大統領が登場するあからさまなモノまである。逆に、トランプ候補のような強硬なリバタリアンが活躍する映画はほとんどない。これは、かつてオバマ大統領が誕生する前、黒人大統領の出てくる映画がいくつか出てきたのと同じ現象である。

しかしながら「ゴーストバスターズ」には、女性が登場し活躍する必然性があるから、不自然さは感じないし、普通に楽しく見ることができる。今年の「女性推し」ハリウッドムービーの中でも、なかなかよくできた部類といえるだろう。



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