「デッドプール」80点(100点満点中)
監督:ティム・ミラー 出演: ライアン・レイノルズ モリーナ・バッカリン

観る前にテンションを上げないと

世界中でR指定映画としての興行記録を塗り替えている「デッドプール」を徹底的に楽しむには、酒でも飲んでテンションをアゲてからの方がよい。でないと私が見た試写室のように、皆でそろって沈黙することになりかねない。

元傭兵のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、今は不死身のデッドプールとしてお気楽に悪党をぶちのめしている。だが彼はヒーローを自覚しておらず、単にある男を探し追いかけているだけなのであった。

間違っても子供に見せてはいけない、大人のためだけのアメコミ映画である。戦いの途中でおっぱいポロリはあるわ、人体爆裂グロシーンは多発するわとそのつきぬけぶりはスカウトに来たX-MENもビックリである。これが同じ世界観というのだから仰天企画といってよい。

観客とスクリーンの間、すなわち第四の壁を突き抜けるこのキャラクターの特徴は、いまや映画ではよくある演出ではあるが、軽妙なコメディ色を感じさせつつ、チョイワル主人公に共感させる効果としては抜群である。

それにしても、このキャラクターをどうしてもやりたくて11年間も奔走していた主演ライアン・レイノルズという男もたいがいである。そんなことではブラック・ウィドウに愛想をつかされるぞと言いたくなる。手遅れかもしれないが。

とはいえ、さすが思い入れがあるだけあってしっかり身体も絞ってきたし、役作りは頑張りの跡がうかがえる。

アクション、とくにオープニングのカーチェイスのスピード感は相当なもので、みなさんきっと度肝を抜かれることだろう。難しいのは、その前にあるスタッフ名のギャグが日本人にはなかなか笑えないお寒いものばかりだということ。本当はここで爆笑して一気にテンションをあげてこのアクションシーンを楽しめれば最高なのだが。先に酒でも飲んで、と言いたくなるのもこれが理由の一つ。無理やり勢いをつけてでも不謹慎なギャグに笑いまくる。それが本作を楽しむコツである。

それができれば、そのあとには意外なほどの感動と共感が待っている。たまにはこういう変な映画があってもいい。ようは適切な楽しみ方をガイドできればいいだけだ。

 
デッドプール Vol.6:オリジナル・シン (ShoPro Books)
是非読んでみましょう。
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