「ターザン:REBORN」55点(100点満点中)
監督:デヴィッド・イェーツ 出演:アレキサンダー・スカルスガルド サミュエル・L・ジャクソン

セクシーな新ターザン

ジェーンと結ばれた後の物語である「ターザン:REBORN」は、奇しくも小説版ターザンが参考にしたという「ジャングル・ブック」と同時期に日本公開される。

19世紀末のロンドン。貴族生まれの野生児ターザン(アレキサンダー・スカルスガルド)は、家督を継ぎジョン・クレイトンとして妻ジェーンと暮らしていた。あるとき彼は外交の仕事で故郷のコンゴを訪れるが、そこでジェーンが連れ去られてしまう。再びジャングルへ戻る羽目になったジョンは、すぐにターザンとしての力を取り戻すが……。

ターザンはこれまで何度も映像化されてきた。とくに往年のファンにはジョニー・ワイズミュラーが演じたターザンが有名だろう。開催中のリオ五輪の競泳選手を見てもわかるとおり、ワイズミュラーのように(元)水泳選手の身体というのは行き過ぎたセパレーションやストリエーションが見られない自然な体つきなので、野生動物的なターザン役としてはイメージ通りというわけだ。

その点、今回ターザンを演じるアレキサンダー・スカルスガルドも、ボディビルダーのような極端なマッチョとは違うしなやかな身体を作ってきており、高い評価を受けている。190センチ台の長身は、普通の背丈の人間と混じると、野生的なストレングスを感じられる。

そんな彼が、立体効果を強めに出した3Dによって遠近感、身長含めた高低差をより強調されているのだから迫力がある。ツタを飛び移るおなじみのアクションシークエンスは、正直もっとたくさん見たかったと思うほど。

「ジャングル・ブック」と異なるのは、こちらは「ハリー・ポッター」シリーズの監督だけあってややダークな印象の世界観で、幼い子供向けには作られていないという点。主人公のセクシーさに比較してあまりにジェーンが没個性である点を考えても、男性よりは女の子(30代以上マッチョ好き)向けかなという気がする。

また、CGの限界に挑んだあちらと異なり「ターザン:REBORN」のジャングルはセットを組んだ実物派。巨大な格納庫のようなスペースに建てたそうだが、よくもこんな規模のものを作ったものだと驚かされる。

ターザンが狙われる真相が明らかになるくだりでは、人が許せることとそうでない事、和解できる相手とそうでない相手がわかりやすく対比される。

あまり深みを感じさせる出来でもなく、ご都合主義を感じさせる不自然なアクションシーンもあったりするので、そこいらへんはあまり期待せず見に行くほうがよいだろう。



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