「ジャングル・ブック」65点(100点満点中)
監督:ジョン・ファヴロー 出演:ニール・セティ ビル・マーレイ

子供以外全部CG

「ジャングル・ブック」は、かつてディズニーアニメにもなったラドヤード・キプリングの古典を、先鋭的な技術で実写化したいかにもディズニーらしい映画作品である。

人間の子供モーグリ(ニール・セティ)は、ジャングルで黒ヒョウのバギーラに拾われオオカミのラクシャによって育てられた。だが彼は、人間を災いの元と忌み嫌うトラのシア・カーンによって、ジャングルを去る決断を迫られる。

映画は人間の村を目指してバギーラと旅に出たモーグリの冒険と成長、そして追うシア・カーンとの戦いをアクションたっぷりで見せる娯楽作品である。モーグリ以外はすべてCGという、きわめて前衛的な形で実写化された。

しかもこの挑戦は予想以上によくできており、子役とCG動物との演技上のからみには、まったく違和感など感じられない。はやりのアメコミ映画もそうだが、これからの役者の必須スキルには、その場にいない登場人物に対してもしっかり演技をする、というものが求められる。その究極の姿がここにある。

動物たち同士のやりとりにも問題なく没頭できるし、彼らが子供を思う姿には思わず涙も誘われる。また、子供たちと観賞するお父さんにはスカーレット・ヨハンソンが声をあてるセクシーな大蛇の登場が大きな見どころになるだろう。彼女のトレードマークであるハスキーボイスが活きている。

クライマックスのバトルシーンも迫力があるし、クマなど巨大な野生動物の動きにも、大げさなくらい重低音を強調したSEを重ねていることもあってCGぽい軽さは感じない。本当によくできている。

むしろ冒頭のジャングル疾走シーンでモーグリがパルクールの動きで飛び回るのをみたときのほうがよほど萎える。大変な時代になったものである。

全体的には小学生向きで、まっとうな教訓を得られるディズニー映画である。

掟には、そしてそれを守ることには意味があること。一人では決して生きられないこと。身勝手なことをすれば社会には滅びが訪れること、大きな力を得るためには責任が伴うこと。そうしたメッセージが見て取れるだろう。あくまでジャングルが舞台だが、これは人間界も同じだよと親御さんはフォローしてやるとよいだろう。

大サルが求めるものを自分が持っていないと気づいたモーグリは、おそらく自分が人間としても半人前だと気づいたろう。やがてゼウスに背いたプロメテウスの逸話のように扱いきれないものを手にした時、それに見合った責任能力と知識を身に着ける重要性にも気づいたろう。

ディズニー映画だから危機や失敗にはご都合主義的なフォローが入るものの、モーグリの気づきを通してこの映画を見る子供たちも大事なことに思い至れば、それはとても良い教育となる。

その意味でも中だるみしつつある夏休みの後半にふさわしい、いかにもディズニーらしい映画といえるわけだ

ジャングル・ブック (新潮文庫)
これを機に原作にも触れてみたい親子に。


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