「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」65点(100点満点中)
監督:ローゼマイン・アフマン

アメリカ映画トリビア集

「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」は、映画ビジネスに興味がある50才くらいまでの人にはたまらない、アメリカ映画のトリビア満載ドキュメンタリーである。

ここで描かれるのは一人のオランダの銀行マン。フランズ・アフマンという名の彼は、90年代ごろまでのハリウッド映画を資金面から支えた業界の功労者である。

その作品たるや『ターミネーター』『プラトーン』『ランボー』などキラ星のようなラインナップ。彼が手がけた作品は独立系の製作会社によるもので、もし彼がいなかったらその多くはボツ企画となったか、さらに予算規模の小さい地味な作品になっていたかもしれない。

いったいなぜオランダの銀行の、それもひとりの男がこんなにもたくさんの話題作に関わることができたのか。しかもそれぞれの製作者や監督たちに、まるで神のように崇められているのはなぜなのか。知られざるハリウッドの恩人の姿を、映画は丁寧にひもといて行く。

彼が発明したプリセールスという資金調達システムの説明から始まって、やがてケヴィン・コスナー、ポール・ヴァーホーヴェンといった有名人が登場し、フランズ・アフマンの破天荒な貸し出しのエピソードを楽しそうに語って行く。

製作中に金がなくなって電話したら、翌朝に莫大な額が振り込まれていたとか、紙ナプキンの裏に書いた脚本のアイデアに300万ドル出したとか、アメリカらしいスケールの大きな話が連発する。聞いているだけで面白い。

と同時に、そうした話を本当に幸せそうに語る監督たちの表情に目を奪われる。そこにはまるで、夏休みの思い出を語る少年のような純粋さを感じるのである。

そして、私たちはふと気づくのである。これははるか昔に終わった夢の物語であり、彼らの笑顔の後ろには、現代の映画業界が直面する苦しみがあることに。

フランズ・アフマンほどでなくとも、かつて人や事業内容を見て金を貸すことをしていた銀行もいまはもうない。金を出す側がリスクを取らなくなったその結果が、企画として安全パイである続編やリメイク超大作の氾濫だ。

それでもハリウッドには意欲ある創作者たちが世界中から集まるし、支援する人々もいるからまだましだ。しかし、そこまで景気がよくない国や業界はどうだろうか。たとえばこの日本はどうだろうか。

そんな、ちょっぴり苦い後味を残すところも大人向きの、非常に良質なドキュメンタリーである。

監督はフランズの娘ローゼマイン・アフマン。まるで少女が大好きなパパのことを書いた作文を読んでいるような、幸せで愛情溢れるエンディングには誰もが胸を打たれることだろう。

 
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バーホーベンさん、ありがとう。のセリフが泣けます。いや記事の続きですが。
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