「ダーク・プレイス」60点(100点満点中)
監督:ジル・パケ=ブランネール 出演:シャーリーズ・セロン ニコラス・ホルト

シャーリーズ・セロンの境遇と似すぎ

「ダーク・プレイス」は、「ゴーン・ガール」の大好評が記憶に新しいギリアン・フリン原作「冥闇」のミステリードラマである。私は「ゴーン・ガール」クオリティの作品がこんなにも早く見られるなんてと期待して見に行ってみたのだが、あちらほど万人には進めがたい内容であった。

85年にカンザス州の田舎でおきた凄惨な事件。家族を次々と惨殺されながらも当時8歳の少女リビーの証言が決め手となり、兄のベンが逮捕された。それから28年後、生活に困窮するリビー(シャーリーズ・セロン)のもとに、過去の事件の再検証を行う同好会「殺人クラブ」から事件の話を会合でしてくれないかとの誘いが来る。

まず、シャーリーズ・セロン演じるリビーの役柄が面白い。幼い頃、ひどい事件の被害者となった彼女の元には、全米から億単位の寄付が寄せられた。その大金によってなに不自由なく暮らせた彼女だが、しかしその金は28年間でつきてしまった。気づけばリビーは、なんのスキルもない中年女というおよそ社会のヒエラルキーのなかでも最下層に放り込まれてしまっていたのである。

偽善的で飽きやすい世間の同情というものをこれ以上なく痛烈に表現したこのキャラクターは、しかしさほど悲壮感を感じさせることはない。それは、セロンのやさぐれ役作りにも関わらず美しい外見と、彼女に救いの手をもたらす殺人クラブのリーダー、ライル(ニコラス・ホルト)の人の良さによるものだ。そこが見ていてホッとする。

このライルという男がいかにもアメリカ的で、有名事件を勝手に研究するサークル団体のリーダーという設定。殺人クラブなるこの集まりは、犯罪オタクと変態と探偵気取りの集合体みたいな団体だが、どうやらそこそこ金を集めて独自の活動を継続している。犯罪被害者の周りでこういう連中が跋扈しているのが、いかにもこの国らしい気質という感じがする。

ともあれリビーは、彼らから300ドルとか500ドルといった小銭を受けとる代わりに事件の再調査に協力することになる。そして彼らはなんと、この事件の犯人である兄のベンを冤罪だと考えているのである。

なにしろリビーはまさにその、実の兄が逮捕される決め手となった目撃証人である。はたして8歳の彼女のみたものは真実だったのか。それとも殺人クラブのいうように、彼女は間違った証言をしてしまったのか。それでもおとなしく収監されている兄ベンの真意とは……。

見ている間は間違いなく抜群に面白い。それは保証する。上記のようないかにもアメリカ的なけれん味ある設定もいいし、セロン演じる貧乏美人のキャラクターも魅力がある。

しかしこの映画には、致命的な問題が二つある。

ひとつめは、日本人にとって80年代のアメリカの農業不況というものがまるで実感がない出来事だということ。この時代、カンザスをはじめとするアメリカの農業地帯には、様々な要因から壮絶な不景気が巻き起こっていた。こうした問題を描いた映画もいくつかあるが、本作の場合は真相の最重要な背景としてあるので、予備知識があまりないであろう日本人にとってはピンと来ない可能性が高い。

二つ目は、ミステリファンにとってはおなじみの、作者が絶対に破ってはいけない犯人ルールというものを犯しているという点である。どのルールを破ったかについてはネタバレになるので書けないが、見ればすぐにわかるだろう。

ただ、それでも点数が高い理由は、結局この話は犯人探しとか真相の衝撃なんてのは二の次で、セロン演じる主人公がこうした重大な事実をどう受け止めて生きていくかという部分にこそ力点がおかれているから。そしてその描写が極めてよくできているからである。

とはいえ、それでもミステリである以上、意外性あるオチを期待するのは当然だし、また欲しかった。それくらいは、決して欲張りの要望でもないだろう。

余談だが、シャーリーズ・セロン自身がリビーと同じような悲惨な事件の被害者であるということは有名な話。そんな彼女が演じるということは、やはり見逃せないポイントといえるだろう。

 
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