「白鯨との闘い」60点(100点満点中)
監督:ロン・ハワード 出演:クリス・ヘムズワース ベンジャミン・ウォーカー

漂流物原型

ハーマン・メルヴィルの「白鯨」の真実に迫るノンフィクション「復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇」を基に描いたドラマ「白鯨との闘い」は、「白鯨」未読者でも十分に楽しめる海洋アクションの一面も持つ。

19世紀初頭、鯨油の獲得を目指すエセックス号の一等航海士オーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース)は、平民出身ながら船員の信頼も厚いたたき上げの実力派。だが名家の息子である船長(ベンジャミン・ウォーカー)は、そんな彼のアドバイスを聞かず無理な命令を強行し、船を窮地に追い込んでしまう。

漂流物の原型のようなお話で多くの類似品が存在するがために、この手の作品はストーリーへの興味だけではなかなか難しい。そこで本作でもいろいろと膨らませてはいるが、「白鯨」の裏話実話という付加価値がないと少々厳しいであろうレベル。

当時の捕鯨の様子が細かく描かれている点は、ちょうど「ザ・コーブ」への反論映画「ビハインド・ザ・コーヴ 〜捕鯨問題の謎に迫る〜」が公開中ということを考えると、セットで鑑賞するとより理解が深まる相乗効果を上げられそうだ。ただし、その描写の丁寧さに比べると、水中のCG映像は透明度が高すぎて、どこかBBCの再現ドキュメンタリー的な安っぽい質感なのはいただけない。

さて、捕鯨といえば、本作におけるクジラの扱いは、作品のテーマにかかわるキーポイントとなりそうだ。たとえば白鯨に対するジョージ船長とオーウェンの認識の違い。その会話シーンを伏線とする、ラストのオーウェンと白鯨の接近遭遇、最後の戦い。そこでのオーウェンの行動が、物語を読み解くヒントとなるだろう。

まとめると、未読でもいいができれば白鯨を読んでいること、その裏話に興味があること、そしてまだ映画の内容のネタバレを受けていないことが本作を"最大限に"楽しむための三点セットといえる。お楽しみあれ。

白鯨 上 (岩波文庫)
メルヴィルのほうです。
白鯨との闘い (集英社文庫)
こちらは原作のほう。


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