「アンフェア the end」70点(100点満点中)
監督・脚本:佐藤嗣麻子 出演:篠原涼子 永山絢斗 佐藤浩市

気迫が感じられる

篠原涼子が一糸まとわぬ姿を見せる「アンフェア the end」は、テレビじゃできないことをやってやるとの気迫が感じられる、好感度の高い一本である。

転落死事件の現場を訪れた刑事の雪平夏見(篠原涼子)は、そこで見覚えのある手がかりを発見する。やがてその死体が村上克明検事(山田孝之)だとわかると、これもまた彼女自身にかかわる一連の事件に連なるものだと明らかになる。

秦建日子の小説をもとにした人気テレビシリーズに始まり、本作で3本目の映画版となるアンフェアシリーズ。長年引っ張ってきた謎のほとんどすべてが明らかになる本作は、文字通り今度こそ完結編とみてよいであろう。その名にふさわしい盛り上がりを見せるし、映画版としてもこれが出来はいちばんいい。

もっとも、長年のファンに向けた責任というべきそうした謎解き部分は、スッキリ感と驚きという点では申し分ないものの、タイトル通り毎度のアンフェアな印象がミステリ好きにはしこりがこのるところ。

どんでんがえしのためのどんでんがえしは、いかに驚きが大きくともチープである。とくに大使館における最大のあれは、必然性というものが大きく欠けており、やらない方がよかったんじゃないのとさえ思われる。

その意味で本作は、伏線の回収はしっかりやっているが、あまり鮮やかなオチというわけではない。相当な無理やり感である。もっともこれも映画館に来てくれた人へのサービスであり、好意的に受け取っておこう。

篠原涼子演じる雪平夏見というキャラクターは「だまされやすい美人萌え」という新機軸を開拓したが、本作でもなかなかふるっている。男勝りの有能なデカにみえて、そのじついつも信じちゃいけない奴ばかり信じて騙されいじめられる。

あまりほかのフィクション作品で見たことがないが、こういう女性は現実では相当モテるだろう。性格が良いともっぱらの評判の篠原涼子のイメージにも合うはまり役といえるだろう。

結論として「アンフェア the end」は、テレビドラマ映画としては相当いい部類に入る。それは話や撮影のスケールが大きいという意味だけでなく、映画らしい何かを出そうとの努力が成功しているからだ。それがいったい何なのか、佐藤嗣麻子監督は脚本をつとめた1作目を含む3本の映画で徐々に学び、正解に近づいていった。

何本撮っても進歩が見えない映画監督が少なくないのに、右肩上がりにシリーズを盛り上げたこの監督はたいしたものだと思う。「アンフェア the end」は、ドラマのファンのみならず楽しめる気軽な国産ミステリアクション。是非ごらんあれ。



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