「この国の空」40点(100点満点中)
監督:荒井晴彦 出演:二階堂ふみ 長谷川博己

二階堂ふみのヌード

戦後70年ということで各社から戦争映画が公開されるが「この国の空」は芥川賞作家・高井有一の谷崎潤一郎賞受賞作を映画化したもの。戦争が一人の若い女にどんな影響を与えたかを見つめる文芸作品だ。

終戦も間近な東京の外れ。母(工藤夕貴)と暮らす19歳の里子(二階堂ふみ)は、妻子を疎開させている隣人・市毛(長谷川博己)の身の回りの世話をするようになる。周囲にいる唯一の若い男である市毛を、里子はやがて意識するようになるが……。

戦争というものは、当事者以外にとっては滑稽でばからしいものであると気づかせてくれる点でこの映画にはある種の価値があろう。しかし、このどこかノーテンキなシュール感は好みが分かれるはずだ。なんといってもまずはヒロインの二階堂ふみの顔が、あまりに"ザ・沖縄!"すぎるから、観客は違和感を感じざるをえない。斬新なラストショットでもそれは感じられる。

やはり、なぜこういう顔をした彼女がこの役を演じなくてはならなかったのか、そこが伝わってこない点が戦争映画としてはメッセージ性の弱さに直結するのではないか。

むろん、処女喪失シーンのたどたどしいあえぎ演技だとか、その後の入浴シーンにおける、食糧難の時代とは思えないほどぽっちゃりした後ろ姿ヌードなどは、なにはともあれ見て損のない部分ではある。

10代の女の子にしかかもしだせない、むっちりしているのに垂れていない各所のみずみずしさは、映画の中でトマトにたとえられる肉体果実そのものだ。見た目においてはこれまでにない二階堂ふみを見せている、といってもいいかもしれない。

とはいえ、男に喝を入れるシーンなどでは普段の絶叫演技にもどるわけで、コントラストは感じられど演技面での意外性はあまりない。その点は不満である。彼女はまだまだいろいろできると思うので、もっと監督さんたちは追い込んでみてはどうか。

映画の中で何度も繰り返されるように、戦争中は食料やものが不足する。そして同じように、男も不足する。

現代からみれば大変貴重なシルクの着物と引き替えに、わずか米6升を農家からもらってくる場面がある。

戦争映画ではよくあるシーンだが、本作では米イコール処女という暗喩が感じられる。里子はバージンという名の貴重な絹織物と引き替えにいったい何を得るのか。そこがポイントだ。

実際に起きた戦争とは思えない、どこか非現実的な物語。こいつを見てどう感じるか。二階堂のお尻以外になにを見るか。みなさんにも聞いてみたい。

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この映画をみると、いかにむちむちなスタイルかがよくわかる。
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