「リアル鬼ごっこ」75点(100点満点中)
監督:園子温 出演:トリンドル玲奈 篠田麻里子

すごいインパクトの園子温最高傑作

日本では、人気原作をうまく映画化した作品が余りに少ない。そのため、"原作レイプ"などといった物騒な言葉がしょっちゅう使われている。

園子温監督「リアル鬼ごっこ」も、山田悠介の人気ミステリが原作の実写映画。すでに何度も映画、ドラマ化されている人気原作と言っていいが、この映画が"原作レイプ"と批判されることはまずない。

なぜなら園子温監督は、そもそもこの原作を読んでいないし、最初から読むつもりもなかったからだ。

女子高生ミツコ(トリンドル玲奈)は、姿の見えない何者かに追われていた。必死に逃げ、何とかたどり着いた先は見知らぬ女子高。だがそこで彼女は、周囲からまるで知り合いのようにふるまわれて困惑するのだった。

読んでいないどころか内容も知らないのだから、原作と比較してうんぬんなんて批評の手法はいっさい通じない。そもそも原作に似せよう、再現しようという発想で作っていないのだから当然である。こういうことを平然とやってしまうのが、園子温のアナーキーな魅力である。

しいていえば、主人公が理不尽な追いかけっこを強いられるという、プロットらしきものが共通していると言えばしていなくもない。だが、それ以外は結末まで原作とは全く異なる。よって、既読者であろうが絶対に先読みは不可能である。なにしろ監督が読んでいないのだから。

そして、園子温版「リアル鬼ごっこ」最大の魅力はその、先が全く読めないシュールな展開にある。

この映画、万人向けではあるまいが、幸いなことに園子温作品としては例外的に「普通なシュールさ」を楽しむことができる。その「普通に面白い」シュールな部分をまずは高く評価したい。

いったいなにを言っているのかさっぱりわからないかもしれないが、ようするに、あなたがこれまでの園子温作品を苦手としていても、ぶっとんだ映画、つきぬけた個性を味わいたい映画ファンならば確実に楽しめる、という意味である。

むろん、仁王立ちで叫ぶ女が何人もでてきたり、主演女優が変わってもヒロインの傾向が過去作とどこか共通している(私は監督のオンナの好み、といつも表現するが)など、園子温監督らしさは色濃い。

そして、相変わらず言っていることにはちっとも共感できないが、それでもこの謎めいた世界観、原作のかけらも残さない潔いオレ様ストーリーの面白さは十分に堪能した。断言してもいい、「リアル鬼ごっこ」はすこぶる面白い映画である。

正直なところ、いまどきJKで遊ぶ気にはなれねーよとか、JK文化じたい時代遅れ感たっぷりであまりにおっさん臭いなとは思うものの、その昭和感もまたこの監督らしさであろう。

公開中の「ラブ&ピース」にしろ本作にしろ、この人はこういうものが心底大好きなんだろうなあと強く感じられる。いつまでも卒業しない男だなとあきれる気持ちもチラつく一方、だからこそこういう痛快なものが作れるわけで、感心もする。

映像的な見せ場については、どこを語ってもネタバレになりそうなのでやめておく。

ただいえることは、想定外のナンセンス感と、ショック度100の残虐スペクタクル、キテレツな落ち。そして何より3人のかわいらしい女がでてくると言うことだけ。

何かと話題のドローン撮影を多用した不可思議感あふれる世界観と恐怖シーン。新鮮で、つきぬけ度は過去最大級。歴代園子温作品の中でもイチオシである。勇気と怖いもの見たさの好奇心をあわせ持った方ならば、試しに見てみるとよいだろう。

リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)
映画とは全然違うけど原作も面白い。


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