「マッドマックス 怒りのデス・ロード」95点(100点満点中)
監督:ジョージ・ミラー 出演:トム・ハーディ シャーリーズ・セロン

弱き者たちの反撃

「マッドマックス」なんて化石みたいなシリーズあったなあと、ほとんどの人が思うだろう。この4作目はもともと15年も前に企画された続編で、トラブル続きで制作が中断して今に至る。こうした経緯をたどった企画、ましてタイトルロールのメル・ギブソンでさえ嫌気がさして降板したというのだから、どう考えてもダメ作確実である。

荒廃した世界をさまようマックス(トム・ハーディ)は、この辺りを牛耳るイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)から、貴重な水やガソリン、そして妊娠できる女たちを奪いトレーラートラックで逃げてきた女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)と出会う。成り行きから彼女らに加勢することになったマックスだが、背後にはジョーが率いる無法者集団が迫っていた。

ダメ作確実と思われた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、しかしその予想を覆す、シリーズ最高傑作であった。のみならずここ10年間、これほどテンションの高いアクション映画は見たことがないほどの、歴史に残る大傑作として登場した。3DおよびIMAXにもぴったりの映画で、いくらでも追加料金を払うだけの価値があるとまずは最初に断言する。

そして私がつくづく思いだしたのは、弱き者たちが無法な権力・暴力に対して一撃をくらわす。この熱さこそがマッドマックスの魅力だったなということである。これは、この企画をあきらめなかったオリジナル版の監督ジョージ・ミラーがずっと描いてきた前向きな応援歌、メッセージでもある。

最初から最後まで、トラックで荒野を爆走して逃げる、追いかける! そのシンプルさもまた良い。たったそれだけの舞台装置の上でドラマを作り、人間を描き、感動的な見せ場を組み立てる。これこそ娯楽映画の醍醐味というものであろう。

このド迫力映像の演出に、監督はCGを極力排除したと聞けば見た方はびっくりすると思うが、あのアクションもこのスタントも、実際ににんげんが演じている。はっきり言ってむちゃくちゃである。旧版では撮影時に死人まで出したと噂された激しいアクションが、さらに10倍くらいグレードアップして登場する。

意味もなく車の前に括り付けられてギターを演奏する男とか、死を恐れぬ被曝者軍団とか、ギャグ一歩手前の革新的ハイテンションキャラクターたちがまた素晴らしい。種もみ老人ほか、原版から影響を受けた「北斗の拳」など幾多のフォロワーを逆にパロディにする遊び心も各所に見せるあたりも余裕を感じさせる。

日本公開作が続くマックス役トム・ハーディもいいが、シャーリーズ・セロンはじめ女性キャラクターが美人揃いなのもまた楽しい。食い物もろくにない世界で、なぜお前たちはそんなにマッチョなのか。なぜそんなにきれいな服をきて、髪もツヤツヤでスタイル抜群なのか。突っ込みながら楽しくみられる。

そんな美人そろいの中でもシャーリーズ・セロンは群を抜く魅力を放つ。古びたオイルを顔面に塗りたくっても、片腕を失っていても、それでも一番美しいのだから相当である。監督が相当このキャラクターを気に入っているのは疑いない。180p近い長身の格闘戦には、女ながらに説得力がある。たいへん恰好いい。

シャーリーズ・セロンはこの映画をリブートと呼ぶが、監督はそう考えておらず、旧3部作からつらなる世界観ということだが、いずれにせよ前作までの鑑賞はさほど必要ない。むしろこの新作からみて、旧に戻ってもいいのではないか。

2015年はなつかし洋画シリーズの目玉が続々と公開されるが、ターミネーターもスターウォーズも「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の出来を見たら青ざめるのではあるまいか。そのくらい、大満足確実の逸品である。

 
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メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロ−ド
あの車も、メル・ギブソンもいなくてもこれだけの傑作とは。
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