「Zアイランド」70点(100点満点中)
監督:品川ヒロシ 出演:哀川翔 鈴木砂羽

映画好きの監督らしい研究の成果

「これはフロム・ダスク・ティル・ドーンを意識した?」との問いにあえて明言せず「ただ、あの映画は大好き」と思わせぶりに答えた品川ヒロシ監督の「Zアイランド」は、なるほど、映画好きの監督らしいよく研究された娯楽映画であった。

宗形組組長の博也(哀川翔)は、抗争相手との戦いで大けがをし、やがて極道から引退した。時が過ぎ、久々に再開した武史(鶴見辰吾)に彼は言いにくい報告をする。それは、博也が面倒を見ていた武史の娘(山本舞香)が離れ島に家出しているとの事実だった。

なにやらチープ感あるVシネ風の序盤に肩すかしを食らっていると、どどん!と最初の大波にさらわれる。

そうして鮮やかなジャンルチェンジをきめたあとは、品川監督得意のギャグシーンの連続で楽しませてくれる。

これは、とくに後半ジャンルのファンには「わはは、監督わかってんなぁ」と共感を得られるであろう、あるある系のネタがメイン。笑いのツボにかけてはさすがプロで、外すことはない。

さらに、その対極にある「怖さ」演出もなかなかのもので、だからこそこの映画は高く評価したくなる。笑いと恐怖の間で感情を揺さぶることで、観客を感動のクライマックスにつれていくのはエンタメ基本中の基本。

こういうきちんとした映画が作れるのは、この監督が映画というものをよく理解している証拠である。

お笑い界から映画監督になった人は何人もいるが、品川監督の作品が一番万人受けする理由はそこにある。基本をとばして応用を試せば、たいてい失敗するということだ。

後半ジャンルの基本をよくわかっている品川監督は、だからこそかようにオリジナリティある結末もひねり出せる。

そんな数々の定石外しの中で、とくに私がユニークだなと思ったのは銃の扱い方である。

銃とは、とくに西洋製のあらゆる○○○映画では切り札となりうる強力な武器。だが品川製のそれにおいては全く逆の性質を持つことが、注意深く見ているとわかるはずだ。この映画では、銃は決してサバイバルにとってプラスではない。それは象徴的ですらある。

とくに、これはオチとも密接に関わっているから監督は何か意識していたのかもしれない。テーマを込めるとしたらここだろうと思い本人に聞いたことがあるが、これまたはっきりとした回答を得ることはできなかった。

ところで芸能生活30周年を迎えた主演の哀川翔は、ずいぶんとこの映画を気に入っていたとのことである。監督を交えた彼との雑談の中でも私自身、それは感じた。

聞くとどうやら壮大なる続編構想もあるようだが、なるほど大予算を預けてみたいと思わせるだけのポテンシャルを、この映画と品川監督には感じられる。はたしてそれが実現する日が来るのかどうか。それは「Zアイランド」のお客さんの入り次第、ということになるのだろう。

Zアイランド(ヤバイヤバイデッドグリーン) (L)
これはさすがに……。
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面白い。好きなんだとか。


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