「ラブストーリーズ コナーの涙」「ラブストーリーズ エリナーの愛情」60点(100点満点中)
監督:ネッド・ベンソン 出演:ジェシカ・チャステイン ジェームズ・マカヴォイ

2本で一つの物語

「ラブストーリーズ コナーの涙」「ラブストーリーズ エリナーの愛情」はそれぞれ独立した映画作品だが、2本ともみていただくことが大前提の企画のため、特例として2本分を一つの記事で取り扱うことにする。

大恋愛の末に結ばれたエリナー(ジェシカ・チャステイン)とコナー(ジェームズ・マカヴォイ)は、しかし愛する子供を失って以来、笑いのない生活を送っていた。エリナーの心にコナーがなかなか踏み込めないうちに、彼女はどんどん病んでいく。はたしてこの二人の行方はどうなるのだろうか。

ひとつの恋愛の始まりから終わりまでを、男女それぞれの視点で2本の映画にする。観客はどちらの映画からみてもかまわない。男と女それぞれの観客がいることを考えたら、少なくとも4つの感じ方ができるというユニークな企画である。

じじつ、私は男視点版「コナーの涙」からみたが、逆の順番でみたらずいぶん違った印象になっただろうと思う。「コナーの涙」からみると、女の怖さとか、男がいかに女をわかっていないかという事を思い知らされ、しゅんとなる。

この映画をどういう順番で各映画館が上映するのか知らないが、同時に2作品を2劇場で上映していたらおもしろい。それなら仲良し男女4人のダブルデートや映画合コンに使える。2本見終わった後にしこたま飲みながら互いの印象を話し合うと、相当盛り上がることができるだろう。ちなみに誰か企画したら、考案者の私を必ず呼ぶように。相手は33歳未満で美人で佐々木希似であればぜいたくは言わない。

それはともかく、全体的に楽しい思い出を中心とした「コナーの涙」と、真逆にシリアスなオープニングの「エリナーの愛情」は、まさに男女間の、一つの恋愛に対する印象の違いそのものだ。

男はノーテンキに過去を懐かしみ、女は思い出したくもない過去として相手を消し去ろうとする。よくあることだ。もっともエリナーとコナーにはしゃれにならない事情があるので、そうそうお気楽なことにはならないのだが、それでもコナーの視点はどこか前向きでたくましいものがある。

二つの映画は色合いも異なる映像づくりで、同じストーリーながら単なる繰り返しではもちろんない。ときおり共通の事件やシーンを挟みながら、互いが伏線になったりして、両方見る事ではじめてエリナーとコナーの物語のすべての謎が解けるようになっている。

基本的にコナー版では、彼女の本心は描写されず、女心は想像するほかない形。だが、それでもなんとなくうまくいけば、男は結局そこにいたる女の心の変遷など気にもしない。結果オーライは、いかにも男側のよくあるパターンである。

だが、その裏で女はこんなにもあれこれ回り道をして、いろいろ考えて、同じ結論に達していたりする。そういうことが、エリナー版を見るとわかる。

そんなつくりからも、個人的には「コナーの涙」を、特に男性には先に見ることをすすめている。だが、女性の場合はどうだろうか。正解はわからない。

本来なら、もう少し過激というか、容赦のないミステリー仕立てにしたら、このアイデアはより生きただろうと思うが、監督さんは心優しいのかこういうお話にした。

それでも3時間半つきあう価値は大いにある。女の子らしい女の子をつれ、ぜひデートにご利用あれ。また、繰り返しになるが、33歳以下の佐々木希似をご存じの方は、当方へのご連絡をお忘れなく。

ゼロ・ダーク・サーティ コレクターズ・エディション [Blu-ray]
ジェシカ・チャステインといえばこれですよ。


連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.