「ミュータント・タートルズ」60点(100点満点中)
監督:ジョナサン・リーベスマン 出演:ミーガン・フォックス ウィル・アーネット

これでも大ブーム中

「ミュータント・タートルズ」はアメリカでえらいブームとなっていて、おもちゃの世界一を決める「トイ・オブ・ザ・イヤー賞」も受賞したほど。自費出版から始まったキャラクターものがここまで育つというのは、ある意味なかなか健全な話かもしれない。

シュレッダー率いる犯罪組織フット軍団により、ニューヨークの治安は悪化する一方であった。テレビレポーターのエイプリル(ミーガン・フォックス)は彼らを硬派な報道で追いたかったが、回ってくる仕事はナンパなヒマネタばかり。だが、そんな彼女は偶然にもフット軍団を成敗する謎の亀ヒーローを目撃、追い始める。

プロデューサーとして名を連ねるマイケル・ベイの強い意向で映画化された本企画は、なるほど彼らしい大仰なスペクタクルシーンとユーモア満載の、お気楽娯楽超大作である。

その個性の影響を感じられるのが、タートルズと悪者たちが雪山を滑り降りる見せ場で、このスケール感にはもう苦笑するほかない。なにしろ巨大トレーラーがぐるぐるスピンしながら木々をなぎ倒し、それらをサーフィンするがごとく皆がかわしながら戦いを繰り広げるという、もうほとんどギャグとしか思えないブッとびぶりである。きっと作っている人たちもコンテを書きながら「マジこれバカすぎ」と大爆笑しているんじゃないかと思わせる、いい意味での悪ふざけ感が出ている。こういう種類の笑いを、大人向けにもっと増やしていけばなお楽しいと思うのだが。

個人的には、イケてる女子の代名詞のようなミーガン・フォックスを、徹底的にいじって笑いをとるセンスに共感する。亀がいるのよ、見たのよ! と周りに訴える彼女を、頭のおかしな人扱いする周囲の反応とか、これはオサレなイメージの彼女がめちゃくちゃかっこ悪い事をやっているからこその可笑しさである。

だいたいマッチョな亀が地下に秘密基地を作って悪者を夜な夜なぶっ倒すなどという設定も、見た目も、実写にするとあまりにバカらしいのだから、このくらいの扱いがちょうどいい。これまで何度も映像化してきたからこその、絶妙なバランス感覚といえる。

亀の血液の争奪戦というストーリーも、くだらないことこの上ない。バイアグラがある今、そんなものはいまどき日本のオッサンたちもほしがるまい。そしてそのくだらなさを、作り手も完全に理解して楽しんでいる、そこが本作の美点といえる。

ゲテモノ感あふれるヒーロー映画として、アライグマのディズニーに真っ向から戦いを挑むパラマウント。はたして軍配はどちらに上がるか。



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