「トランスフォーマー/ロストエイジ」70点(100点満点中)
監督:マイケル・ベイ 出演:マーク・ウォールバーグ ニコラ・ペルツ

アメリカ映画界渾身の自虐ネタ

世界中で大人気のトランスフォーマーだが、いよいよ4作目にして、満を持しての中国持ち上げバージョンを登場させてきた。

悪のディセプティコンから地球を守ったはずのオートボット軍団だが、その圧倒的な力を恐れる人類からは逆に迫害を受けていた。生き残ったオートボット戦士たちは人間から隠れて暮らしていたが、そのリーダー、オプティマスがトランスフォームしたトラックを偶然発見したのは当局ではなく、テキサスの廃品業ケイド(マーク・ウォールバーグ)とその娘テッサ(ニコラ・ペルツ)だった。

莫大な映画市場を擁しながら外国映画に公開本数制限を課している中国。アメリカ映画界は自作への中国資本導入という裏技でそれを逃れ、こうしたブロックバスターをかの国の送り込んでいる。

脚本の検閲という、まともなクリエイターなら蹴飛ばすような条件を飲むことになるが、お金もうけ至上主義のハリウッドはそんなことはさほど気にしない。かくしてシリーズ中もっとも中国推しがあからさまな奇妙な一本ができあがった。

それは終盤最大の見せ場が香港を舞台にした中華風の町並みをバックにしていたり、中華系のキャラクターが活躍したり、最大の目玉ダイナボットの登場シーンもそこに含まれていたりといった形で現れる。

だが、それ以上にこの映画、アメリカ人の自虐ネタが多くて笑える。オプティマス発見シーンにおけるハリウッド批判などは、マイケル・ベイ監督がいうと世界一の自虐ネタとなっている。

悪いアメリカ人を中国で痛い目に遭わすとか、それはあらゆるところに見受けられるわけだが、このハリウッド渾身の自虐ネタを大喜びで見ているのだから、中国市場もちょろいもんだと業界人はみているに違いない。こういうギャグで笑わして喜ばしておけば俺たち丸儲け、というわけである。

映画自体はそうした生臭い背景なんのそので、2本分の上映時間に3本分の見せ場を盛り込んだラーメン二郎仕様。少なくとも、量に文句を言う奴は一人もいない、世界で彼らしか作れない特盛りのアクションシーンを味わえるだろう。

主人公はティーンからおじさんへと変更。一作目から7年もたつから、観客だって中年まっしぐら。マーケティング部の分析を忠実に取り入れた、正常なるシリーズのリスタートといえるだろう。

オプティマスらオートボット軍団は、いまやずいぶんと寂しい布陣になってしまったが、矢つき刀折れても戦い続ける熱さはシリーズ最高。

何しろオプティマスの青々しいヒロイズムがたまらない。自分をかくまってくれている主人公が窮地に陥ったときの迷いのない行動、ラストシーンの神をも恐れぬ熱い台詞。たとえ勝ち目がなくとも立ち上がる。これぞカリスマである。

劇中、なぜ仲間たちがオプティマス司令官についていくのか。その理由を「洗脳」と自虐的に語る場面があるが、誰もが苦笑しながらも納得の魅力的なリーダーといえる。つまるところ、これは現代のアメリカ人がどういうリーダーを欲しているかを表してもいるのである。

守る側、守られる側。その理想的関係を描いた「トランスフォーマー/ロストエイジ」は、そんなわけで歴史的大ヒットを記録した中国の観客以外にも見どころが多い一本である。

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オプティマスの青臭さがなんともいえない。


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