「ザ・ゲスト」70点(100点満点中)
監督:アダム・ウィンガード 出演:ダン・スティーヴンス マイカ・モンロー

もう一つ意外性と深みがほしい

ジャンルを越えたとか、ジャンルレスなんて宣伝文句に引かれ「ザ・ゲスト」をみたが、その高い期待がいい具合に緊張感を持続させてくれたものの、結果的にそれらは過剰広告で終わった。毎度ながら人が良過ぎる超映画批評である。

ある一家のもとに、戦争で亡くした息子の戦友と名乗るデイヴィッド(ダン・スティーヴンス)が訪ねてくる。礼儀正しく誠実で、息子の思い出を語ってくれた彼に母親は涙し、しばらく泊まって行ってほしいと半ば無理やり彼を滞在させる。デイヴィッドは気難しい父親をも一瞬で魅了し、いじめられっ子だった息子の悩みも解決してしまうのだが……。

期待したほどではなかったとはいえ、この映画はかなり面白いホラー寄りのサイコサスペンスである。突然の訪問者は、ハンサムなお顔と礼儀正しいふるまいで一家の奥様の信頼を得て、あれよあれよというまに滞在を開始する。

思春期の娘さんは、ある種の直観力でこいつ絶対怪しいだろと気づくわけだが、お母さんという大権力者が全幅の信頼を置き、頼みのお父さんまで彼のハッピースマイルにコロリとだまされるに至っては、いよいよ恐怖は募る一方。反抗期の娘より、死んだ長男の生まれ変わり的立ち位置をゲットしたデイヴィッドのほうが信頼度が上になってしまっては、もう打つ手がない。

後半は、この男の正体が予想しない、まさに斜め上から明らかにされる。そのあたりがジャンルレスの衝撃、ってな宣伝文句なのだろうが、個人的にはそこまでとは感じず。というより、いくらなんでもソレはないだろう、フェイクだろうと思っていたとおりの正体だったので拍子抜けである。

とはいえ、その後のとんでもない恐怖展開は十分に楽しめたのでよしとする。

この映画の残念なところは、やりようによってはここで描かれる善悪の構図を、鑑賞後にひっくりかえすような仕掛けができたのに、という点にある。

この、乱暴なランボーというべき主人公だが、ダイナーや父親のくだりなどがなければ、むしろ悪いのは……という大逆転の鑑賞後感にもなりえた。

そうすれば、現実のアメリカとテロリストの対立構図同様、一見悪く見える奴がそうとも限らない、とのちょっとした深みをストーリーに加えることもできた。

見た目の驚き重視でそこまで気がまわっていないところが「ザ・ゲスト」のちょいと物足りない部分といえるだろう。

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何か仕掛けてくる監督なんで、いつも期待してしまいますな


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