「るろうに剣心 京都大火編」65点(100点満点中)
監督:大友啓史 出演:佐藤健 武井咲
豪華キャスト大会
前作の大ヒットをうけての続編ということでさすがの好景気。すごい豪華キャストである。しかし、実にもったいないことであるがそれでも本作が「世界を驚かす」ことはない。
人斬り抜刀斎こと緋村剣心(佐藤健)は、いまや殺さずの誓いを立てて静かに暮らしている。だが、かつての自分の立場を継いだ凶暴な男、志々雄真実(藤原竜也)が京都で復活、政府からその阻止を依頼される。
主演をはれる役者が何人もそろっている中、頭一つ抜け出ているのが志々雄役、藤原竜也の存在感。あれだけの役者たちが、あれだけのバトルを見せているのに、一番印象的なのが藤原による一方的な口げんか=あおりのテクニックというのが笑える。スーパーヒーロー佐藤健も、彼の前ではまるで子供。どう考えても勝てる気がしない。藤原竜也は大した役者である。
このほか気を吐いていたのは、体が出来ている=動きに筋力の裏付けがある四乃森蒼紫役・伊勢谷友介。美しい身のこなしにはほれぼれするが、毎回主人公の尻を追い掛け回してそのつど逃げられる役柄は、ちょっと間抜けで笑いを誘う。異様に動きのいい爺さん相手にてこずる姿も、ほとんどギャグでしかない。
このように、伊勢谷友介ほどの俳優がお笑い担当になってしまったのは、この作品に未読者への配慮がないからである。映画だけ見ていても、行動原理がさっぱりわからないキャラクターが、彼を含めて何人かいる。武井咲演じる神谷薫なども、どこからみても剣士には見えず、そのうちその設定を忘れかけてしまう。激闘の中にひょっこり顔を出すなど、何をしに来てんだ感がものすごい。
連載リアルタイム世代の私でぎりぎり、それ以降の完全なる未読者はわしわしと振り落とされる映画版、である。
なお、終盤の大物隠れキャラをみてもわかるように、この映画は主に女性たちを喜ばせるために作られているわけだが、邦画アクションなど年に何度も映画を見ないような彼女らのためだけに存在するには、もったいないほどの映像技術、アクション演出も特長。この演出で松平健主演の時代劇なら、それこそ時代を変え、世界を驚かせるものができたかもしれない。そんなふうに思わせる。
だが「るろうに剣心 京都大火編」は、悲しいかなオンナノコ向け。味方軍は無敵、敵はどんなに屈強に見えても切られるだけの雑魚キャラ。現実味も緊張感もないから、ワイヤーとスタントマンの活躍ばかりが浮き上がってしまうわけで、女子供ならともかく大人の男の鑑賞にはかなりきつい。大人やまともな映画ファンにとってはギャグ映画である。
だが、それにとどめるには惜しい実力も垣間見せる。ある意味珍しい作品といえる。完結編も間をあけずに公開されるが、どこまで改善されるか、楽しみにしている。