「ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂」65点(100点満点中)
監督:リアン・プーリー 出演:チャド・モフィット ソナム・シェルパ

時系列順でわかりやすい

史上まれにみる大量遭難事故が起きたり、そのあおりをうけ芸能人の登山企画がぽしゃるなど、何かと話題のエベレスト登頂。「ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂」は、冒険家なら誰もがあこがれるそんな世界最高峰に、初めて登頂成功した男たちの物語である。

53年、ジョン・ハント大佐(ジョン・ライト)をリーダーとするイギリス遠征隊は、エベレストに挑むことになった。ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリー(チャド・モフィット)と、シェルパのテンジン・ノルゲイ(ソナム・シェルパ)は、その能力の高さから隊に加わったメンバーだが、精鋭揃いのこの隊とて、そう簡単に登れる山ではないのだった。

ドキュメンタリーながら再現ドラマを中心とした構成。3Dという外連味はあれど、過剰な美談や演出があるわけでもなくむしろ淡々としている。ただ、時系列順に見せてくれるし、素人には驚き以外の何者でもないトリビアも適度に入れてくれるので非常にわかりやすく、面白い。

たとえば経験者が語る、頂上付近では15回呼吸しても1歩歩けるかどうか、なんて話はえらくリアリティがある。なにしろ当時は精鋭の登山家やシェルパが13人も死んでいて、逆に成功者はゼロ。そもそも頂上の環境に人体が耐えられるのどうかすらわかっていなかった。それはすなわち宇宙を目指すのと変わらないのだ、との証言にはハッとさせられた。未知なる場所へ行くというのは、なるほどそういうことだったのである。

当時は政治的な思惑もあり、東西各国が国の威信をかけて一番乗りを目指していた。そんな中、これを失敗したら次のチャンスまでの数年間に確実に他国に負けるプレッシャーを背負いながら、彼らは見事に成功した。その運命の分かれ目とはなんだったのか。

シェルパがひとりまたひとりと脱落し、そのたびに残ったものが抱える荷物は増え、荷上げは困難になる。彼らシェルパの道を造るための先遣隊の働きも超人的である。体力の限界まで彼らが作業して道を作るからこそ、後に続くスタッフらが荷物とともに登ることができる。

本当はみなが頂上に登りたいはずなのに、成功率を上げるためあえて直前で引き返すものもいる。その決断のシーンなどは涙なしでは見られぬものがある。そうした男たちの夢を担いで、最後のふたりは登るのである。

高峰の風景はすばらしいものだが、空撮やバストップの構図が多く、この手の山岳映画としては平均的か。その分、3Dで補うということかもしれないが。

それにしても、8000メートルを超える世界というのはとんでもないところだ。

先ほど書いたとおり、未知という意味ではまさに宇宙空間とおなじ。ただし、過酷な環境というだけならば、人類には克服する知恵、科学力というものがある。

山が恐ろしいのは、それだけではない、想像を超える変化が待ち受けているところだ。そうした急激な「変化」に対し、人間の体力と知恵、経験、科学が対応できる領域は限られている。だからこのレベルの高峰への登山というのは、最後は運次第というイメージがある。

多くの登山者が天候悪化であきらめた経験を持つと思うが、それはいわば覆せない運命。そこから先は、撤退の判断をいつするかの勝負。間違えたら死ぬだけだ。

その意味では、宇宙に挑むよりも難しいことなのかもしれない。先ほど運次第と書いたが、それを神の領域へ近づく事だと例えるならば、最後はその許しを得られるかどうかということか。

この映画を見ると、そんなことを考えてしまう。それが正しいかどうかは、エベレストに登ることはまず無いであろう自分には永遠にわからない事だが、おおむね外れていない気もする。

そんなわけで「ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂」は、登山の本質というか、魅力が伝わってくる大変良い映画であった。

For Everest ちょっと世界のてっぺんまで
風船つけて登るとか、いろいろアイデアあったそうですね。
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撮影中に遭難者を救った伝説の映画、だよね。


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