「万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-」60点(100点満点中)
監督:佐藤信介 出演:綾瀬はるか 松坂桃李

おもしろいがテレビ向き

本作がロケをしたルーヴル美術館など世界の有名どころは、誰もがいきたがるが簡単にいけるところばかりではない。ルーヴルひとつにしたって真面目に見れば何日もかかるほどだ。だからそこを舞台に映画を作って気軽に楽しむとの企画には、ある種の正義がある。

モナ・リザが40年ぶりに来日することが決まり、臨時のキュレーターとして万能鑑定士と称される莉子(綾瀬はるか)が採用される。彼女にこだわり密着取材している記者・悠斗(松坂桃李)を引き連れる形でパリに出向いた彼女は、同僚の美沙(初音映莉子)とともに贋作を見分ける訓練も難なくクリアしてゆく。だが、やがて原因不明の不調に見舞われ、持ち前の天才的な鑑識眼を失ってしまうのだった。

まず本作は「ダ・ヴィンチ・コード」(06年)以来、二作品目となるルーブルロケだが、もう少しかの地の魅力を伝えてほしかったところ。湯けむり温泉殺人事件並の観光案内を……とまではいわないが、本作も軽いテイストのミステリなのだから、単なる舞台装置以上に、そこはもう少しこだわってもらってかまわない。

鑑定シーンや、ちょっとしたヒントから持ち前の雑学を駆使して真相まで駆け抜けてしまう主人公の頭の良さはなかなか痛快で、顔面がまったくそうみえない綾瀬はるかのキャスティングもいい。

美術雑学のたぐいは瞬発的に面白いし、予想もつかないところから謎を解き明かす推理課程はオリジナリティもある。

ただこうした雑学見せびらかし系は、変化球すぎて映画にするには軽い。トリックのためのストーリーになっているのも安易ならば、犯人の動機も稚拙すぎる。

結果、真実がわかると、とたんに説得力が薄れて安っぽくなるのもまずいと思うし、防犯カメラにスマホをかぶせて警備員をごまかして……なんてのは映像で見ると非現実的すぎて興ざめする。

初音映莉子のスレンダーな尻のアップは映画とは別に評価するものの、このリアリティのなさに耐えられるのはやはり映画よりもテレビメディアだろうと思う。

クライマックスの鑑定場面も、なにもあんなところでしなくてもと思うし、そもそもそうしたスペクタクルのためのご都合主義を、映画ならばもっと上手に隠さなくてはならない。

美術や衣装など見た目が格調高く、ルーブルロケの効果もあって上質な雰囲気をうまく出せているだけに、その他にももう少し気を配るとさらに良くなっただろう。

万能鑑定士Qの事件簿 I: 1 (角川文庫)
原作本。この1作目からもエピソードをいくつか。


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