「MONSTERZ モンスターズ」70点(100点満点中)
監督:中田秀夫 出演:藤原竜也 山田孝之

役者と監督がかみ合った

「MONSTERZ モンスターズ」は、優れた監督と優れた役者の能力がかみ合い、うまくいった娯楽作である。

目視した相手を自在に操れる特殊能力を持つ男(藤原竜也)がいた。圧倒的な力ゆえに孤独だった男は、しかしあるとき自分の力が全く通じない田中終一(山田孝之)という男と遭遇する。自らの世界に紛れ込んだ"不純物"に動揺した男は、不用意に田中に近づき、取り返しのつかぬ事件を起こしてしまう。

「MONSTERZ モンスターズ」は最強の能力者と、それがただ一人通じない男の戦いを描いたシンプルなアクションドラマである。

それにしても、誰であっても目力で操ることができる。藤原竜也にこんな能力を与えたら、秒速で1万人斬りを達成してしまいそうだが、この映画の主人公「男」そんなノーテンキさはみじんもない。

というのもこの恐るべき力には強い副作用があり、そのため男は肉体をハイスピードで朽ちさせながら生きているのである。それが明らかになるシャワーシーンの衝撃はかなりのもの。ホラー映画でこの手の描写はお手のものである中田秀夫監督の真骨頂といったところだ。

韓国のマイナーな映画が原作(原案)というのもよかった。ヒッチコックも語っているが、サスペンス映画の原作はマイナーな方がいい。メジャーな原作はうるさいファンが厳しい批評の目で監視するし、衝撃の結末というやつがやりにくい。現代は、パブリシティにおけるメリットばかり出資者が求めるものだから、質を重視した作品は減る一方だ。

それにしても、藤原竜也と山田孝之。この二人の役者はすばらしい。山田は藤原に比べると平凡な性格の役柄だから藤原ほど目立たないが、男の強敵として一歩も引けを取らない。どちらが勝つのか予測は困難で、最後までスリルが持続したのは彼の功績も大きいといえる。

中田監督がかなり演技指導で追い込んだそうだが、命をすり減らしながら宿敵を排除しようとする藤原の形相はすさまじいものがある。ある殺害シーンにおいてダクダクと流れる汗は本物だというから迫力が違う。

群衆エキストラ全員の動きをピタッと止めるアナログなストップ撮影や、ホラーテイストの襲撃シーンなどには中田監督らしさも味わえる。殺人シーンはほぼすべて寸止めで残酷ショットを排除したおかげで、対象年齢も中学生くらいならいけそうだ。

石原さとみはヒロインながら前にでてこない控えめな存在感。主演二人が余りに個性強烈なので今回は気の毒だが、これはこれでいい。

無敵に見えた能力のわずかな死角、弱点をはたして田中はつくことができるのか。二転三転する、有能でタフな男二人の死闘をただただ楽しみたい。日本映画界の至宝ふたりの競演を見逃す手はない。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.