「ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中」70点(100点満点中)
監督:ジェフ・トレメイン 出演:ジョニー・ノックスヴィル ジャクソン・ニコル

万人向けへの道を進むのか

出演者たちの常軌を逸した体当たりネタを楽しむジャッカスシリーズ劇場版も、はや4作目。この手のネタは、回を重ねるごとに再現無く過激になってしまうのがありがちだが、スピンオフである「ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中」は方向性を変更して成功した。

86歳のアーヴィング(ジョニー・ノックスヴィル)は、無責任な娘が押し付けてきた8歳の孫ビリー(ジャクソン・ニコル)の面倒を見ることになった。とりあえず離れた父親の元へと押し付け、いや戻そうと考えた彼は、二人で大陸横断の旅に出るが……。

R-18レーティングが常だった映画版ジャッカスだが、R15+だった前作(3D版)から今回PG12へとさらに下げてきた。PG12というのは、小学生以下要注意ということで、保護者の判断によっては見られるという意味だ。家族そろってジャッカス鑑賞とは、恐ろしい時代がきたものである。

実際観てみると、なるほど親子連れで楽しく笑って見られるディズニー映画のような良作である。

……なんてはずはもちろんなく、やはりいつものどぎつい下ネタのオンパレードであった。

一応ストーリー仕立てになっているが、要するに二人が全米各地でドッキリカメラを仕掛け、地元住民に大迷惑をかけまくり、全米を縦断するロードムービーである。

もはや全国民に顔バレしているジョニー・ノックスヴィルは、毎回数時間かけた特殊メイクで86歳へと変身。そんな彼が、孫を演じる子役を引き連れて、お下劣をきわめていく。老人と子供という、およそ人畜無害な組み合わせで手ひどいイタズラを仕掛けるのだから、まったくもってたちがわるい。

その詳細は映画館で見ていただきたいが、すきやばし次郎を所望したオバマ大統領をラーメン二郎につれていくくらい、とぼけたイタズラが連発する。

中でも個人的にひどいなあと思ったのは排泄物ネタである。レストランでそいつをぶちまけるイタズラのため、あんな大がかりな装置を発明、制作するのだから彼らの情熱の方向は根本的に間違っている。我々は、そのばかげたパッション、舞台裏を想像して、ただただ笑わせてもらうだけだ。

美少女コンテストを舞台にしたクライマックスでは、非常識な連中を非常識な二人がおちょくるという、じつにアイロニカルで高度な笑いも提供する。

その後の意外すぎる感動シーンは、残念ながら不発に終わった感じだが、そんなもんはそもそもいらねーから、というのがファンの総意であろう。

相変わらずのジャッカス節で、笑えりゃ十分、俺たちにできないことをやってくれ、とのファンの期待には十分応えた最新作といえるだろう。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.