「闇金ウシジマくん Part2」60点(100点満点中)
監督:山口雅俊 出演:山田孝之 綾野剛
役者はそろった、あとは覚悟だけ
厳しすぎる現実が連載を秒速で追い越してしまったことで各方面から心配の声が挙がる真鍋昌平による人気コミック「闇金ウシジマくん」が、このたび再び映画版になった。
トゴ=10日で五割の暴利で知られる闇金、カウカウファイナンスのウシジマ社長(山田孝之)のもとに、いい年をして暴走族のヘッドを務める愛沢(中尾明慶)がやってきた。自分のバイクを盗み傷つけた慰謝料を払わせるため、マサル(菅田将暉)に金を貸せということだが、ウシジマは承知しないどころかマサルを自分の元で働かせることにするのだった。
キャストはテレビドラマ版から続投。原作と体型はちがえど、持ち前の演技力とカリスマでウシジマくんを演じきる山田孝之は、これはこれでありだなという映像版らしさを確立している。そのほか柄崎役やべきょうすけなどもハマっているし、この映画版から登場するウシジマのブレーン戌亥役・綾野剛、頭のネジが抜けたストーカー役・柳楽優弥あたりも悪くない。とくに柳楽の怪演は、この役者の良さを改めて感じさせた。
物語は、「ホストくん」「ヤンキーくん」を軸に原作のいくつかのエピソードを絡めていくオリジナル構成。
原作屈指の傑作である前者はともかく、「ヤンキーくん」についてはアクションもあり、映画向きだと判断したのだろう。だが、そのコンセプトはちょっと違うと思う。
何しろ今は増税ミックス焼き政策のおかげで、若者たちがあっとうまに底辺まで急降下する時代。その速度たるや、秒速を誇る与沢さんでさえ逃げきれなかったほど。未来を憂う愛国者ならば、この問題をこそもっとも憂慮すべきといえるだろう。
そんな、孤独に苦しみ抜いた人間が最悪の運命をたどる寸前にさっそうと現れ、結果的に救いの道を示すウシジマくんは、まさに時代の申し子。現代日本のダークヒーローであり、だからとてつもなく格好いい。
よってこの映画版は、原作を離れてでもそうした問題への新たなインパクトを示す気概があるべきであった。というより、いまウシジマくんを映画にするなら、それ以外にないではないか。
空前の高支持率を誇る偉い人たちが、日本人を最悪の未来へ落とそうとしている今、彼らを批判せずにいつやるというのか、すべての映画業界人よ。
また、映画としては表現がぬるま湯というのも不満なところ。日本の最底辺の、過激すぎる現実をつきつける、ひりつくようなリアリティこそが原作の持ち味だが、この映画はせっかく映画という表現の場にありながら、テレビドラマ基準の中にとどまっている。それは、各エピソードにおける改変部分が、ことごとくマイルドになっていることからも明らかだ。
せっかくの映画版なら原作を一部でも凌駕するような、国会の奥深くでニヤついている連中が腰を抜かすような、強烈なウシジマくんを見てみたい。
当記事で名前をあげた若き役者たちには、その期待に応える力がある。長年こうしたテーマの映画にプロデューサーとしてかわってきた山口雅俊監督もまたしかり、だ。ぜひもう一度、3作目を作り、本気の映画作りを見せてくれないだろうか。