「テルマエ・ロマエII」70点(100点満点中)
監督:武内英樹 出演:阿部寛 上戸彩
3作目も確実にあるだろう
興収60億円近くを記録した愛国お風呂ムービー「テルマエ・ロマエ」。保守的な思想がネットから一般にまで広がり、韓流ブームさえ押し流してしまった現在。日本アゲのああした映画が受けるのは必然である。
「永遠の0」の大ヒットももちろんその流行に乗っているからだが、さすが東宝はマーケットを読む能力が高い。と同時に、10年近く当サイト他で同じ提案をし続けてきた私としても、やっとそういう映画が連発される時代が来たかとしみじみと思う次第である。
真面目すぎる浴場設計技師ルシウス(阿部寛)は、ハドリアヌス皇帝(市村正親)からコロシアムで戦うグラディエイターたちを癒すテルマエを設計してくれと頼まれる。陰惨な殺し合いゲームを嫌うルシウスは、例によってまったくアイデアが思い浮かばなかったが、すると久々に現代日本へとタイムスリップしてしまう。
さて、そこでは日本の相撲力士たちが入浴中。なるほど、彼らがニッポンのグラディエイターというわけだ。日本相撲協会全面協力による成果は、この大爆笑のオープニングをはじめグラディエイター役(曙、琴欧洲)の重厚なアクションなど、あらゆるところで見ることができる。
基本的には前作と同じフォーマットによる笑いの見せ場が繰り返される。今回も、日本のいいところ、がたくさん出てくる。阿部寛演じるルシウスが仰天するたびに、観客は愛郷心を刺激され心地よい快感を得ることができる。
とくに今回は、混浴温泉という素晴らしすぎる文化が登場する。しかもこちらには最終兵器というべき上戸彩までいる。彼女の入浴シーンでは、側面から確認できる驚くべき胸部のボリューム感に全お父さんが驚愕するであろう。このためだけに入場料を払うとしても、少なくとも8億円の熊手を買うよりコスパがいい投資対象である。
殺し合わないグラディエイターを擁する「現代日本」と「古代ローマ帝国」。それは「平和」と「武力による拡張主義」の対立に暗喩される。娯楽映画にこうしたテーマ性を加味することには賛成だが、「平和」を求める側が少々幼稚なのが残念。ルシウスが平和主義者なのは問題ないが、皇帝ともあろうものは、武力の重要性を理解した上での平和主義、という思想をもってしかるべきである。武力と平和は両立する概念である。そこまで言及していればこのお気楽コメディー映画はさらなる深みを持つことになっただろう。
現状は、前作が良すぎたおかげで、その貯金だけで走り切った第2作という感じ。逆に言えばそれだけ優れた企画だったというわけだが、原作を読むと本作で取り上げなかった要素が残っている。それは前作の記事で私が指摘したことそのものである。あえてそれだけは触れずに作りました、という感じがまるわかりなので、おそらく3作目にはここを強調した脚本が用意されることだろう。そして完璧な終幕を迎える、そんな様子が目に浮かぶ。大いに期待したい。