「クローズEXPLODE」55点(100点満点中)
監督:豊田利晃 出演:東出昌大 早乙女太一
縮小再生産
東京で暮らしているとわかりにくいが、ちょっと地方に行くと今でも時代が止まったような風景に出くわし驚かされる。たとえば先日映画祭の取材で滞在した沖縄本島では、レッドカーペットの最前列でキャーキャーいう東京と大差ないオサレな夏ギャルがいたかと思うと、いつの昭和だよと思わせる暴走族が夜中の国道をかっ飛ばしていた。その服はいったいどこで売っているのかと思うようなファッションだが、少なくともこうしたマーケットは確実に、それもかなりのボリュームで存在するのである。
激しい抗争から時がたち、鈴蘭高校では新たなトップ争いが勃発していた。実力は折り紙つきながらそこから距離を置く鏑木旋風雄(東出昌大)は、凶暴な新入生・加賀美遼平(早乙女太一)とのいざこざからやがて戦いに巻き込まれていく。
「クローズEXPLODE」は高橋ヒロシの人気コミックを原作とする学園アクションドラマ。こうした不良もの作品は、ストリートレースを題材にしたクルマ映画などと共に、地方都市のヤンキー文化層の市場を視野に入れていると、以前関係者に聞いたことがある。劇場公開後もDVD市場で高稼働するのが特徴だという。
三池崇史監督による前作までと比べ、アクション、役者、演出。あらゆる面で縮小再生産の域をでない続編ではあるが、これはこれでニーズには合致しているのかもしれない。
なにしろストーリーはわかりやすく、あくの強いキャラクターが次々でてきて退屈しない。柳楽優弥のボスキャラはよかったし、リンダマン(深水元基)のミステリアスな登場などはイメージ通りでお見事と思わせるほど。このあたりは原作ファンからみても文句はでないだろう。
なにしろ不良ものは、任侠ものや時代劇のように様式美が確立されているから、作り手も演じても迷いがない。だからリアル社会じゃありえないような台詞や展開になっても違和感を感じない。ある意味、水戸黄門以上のお約束の世界というわけだ。
さすがの三池前作に比べればそりゃ多少の迫力不足はあるかもしれないが、それなりに楽しめ満足も得られる。個人的には三池バイオレンスを凌駕するようなアイデアを見てみたかったが、それは多くの観客の期待とは違うのだろう。
縮小でも、マンネリでも、会社が続けたいコンテンツというわけだし、手堅いマーケットもあるし、維持したいというわけだ。そして、実際それには十分な出来。監督も、個性を出せる企画ではないだろうし、うまくやったと思う。
地方のヤンキー、およびそれにあこがれる人たちの暇つぶし用作品としては平均以上。こういうケンカファンタジーが売れるというのも、世の中平和な証拠である。