「なんちゃって家族」75点(100点満点中)
監督:ローソン・マーシャル・サーバー 出演:ジェニファー・アニストン ジェイソン・サダイキス

本気で作るバカ映画

「なんちゃって家族」は、ハングオーバー!シリーズの大ヒットに気をよくしたワーナー・ブラザースによる、よく似たコンセプトのコメディー映画である。

ブラックジョークや下品なギャグ満載ながら、手抜きのない脚本というぶっとい屋台骨をもつのがその特徴。ただ笑わせるだけではない、映画を見たなあという満腹感を味あわせる、サービス満点の一品である。

麻薬密売人デヴィッド(ジェイソン・サダイキス)は、近所のバカな童貞青年ケニー(ウィル・ポールター)のトラブルに首を突っ込んだ結果、貴重な売り物の麻薬を奪われ窮地に立たされる。組織から許され生き延びるためには、危険地域メキシコからの密輸という、命がけの仕事をするしかない。途方にくれたデヴィッドだが、ストリッパーで隣人のローズ(ジェニファー・アニストン)らをニセの家族とし、キャンピングカーで国境を突破する作戦を思いつく。

バカな家族を装えば国境警備も薄れるのではないか、実際バカのメンツはそろっているし……ということで始まる、命がけのファミリーコント。報酬の金以外、何の結びつきもないダメ4人組は、はたして無事に国境を通過できるのか?!

実によくまとまっている。ぶっとんだ、そしてダメすぎる登場人物たち。彼らの素っ頓狂な行動、言動を笑いながらもいつしか共感。最後は応援したくなってしまう。そんなストーリーテリングの妙味を味わえるテクニカルなコメディーだ。

しかもハングオーバー!ほどの悪辣な趣味悪さではないから、一般人にもおすすめしやすい。あちらよりは、だいぶ毒味を押さえてある。

笑いはキレていて試写会場もにぎやかだったが、アメリカのローカルネタを無理矢理日本風に訳す字幕だけはいただけない。吹き替え版であればノリでいけるだろうが、字幕であきらかな意訳をやられると冷めるのが、現代の映画ファンの特徴である。

その他の見所としては、ジェニファー・アニストンによるストリップダンスがある。もちろん、丸だしにするようなエッチなものではないが、あのジェニファー・アニストンが、むちむちな熟女の肉体で、やたらとえろい動きをするのは驚きがある。さすがはハリウッドで撮り方がうまいから、踊りの技術不足も感じさせない。

それにしても、かつて人気を誇ったこの女優も44歳。この歳にしちゃ綺麗なのだろうが、年々こうした幸薄い役が似合っていく姿は痛々しい限り。一番美しい時期の甘い汁をたっぷり吸って去っていくとは、元旦那のブラッド・ピットも涼しい顔をして残酷なことをするものだ……。

それにしても、アメリカ映画の底力には感服する。こんなばか笑い映画にこれだけ手の込んだ見せ場と脚本を与え、それでもできあがってみればビールのような単なる消費物にすぎない。もちろん最初からわかった上で、これほどの手間暇をかけている。贅沢なことをするものだ。



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