「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」45点(100点満点中)
監督:キム・ソンス 出演:西島秀俊 キム・ヒョジン

日韓合作の良いところも悪いところも

韓流熱は急速に冷え込み、政治家は挑発を繰り返す。かつて無いほどギスギスしている日韓関係だが、映画会は何のその。サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した司城志朗のサイエンスミステリ小説『ゲノムハザード』の映画化は、日韓合作、それも企画から配給まで密接に共同作業を行う密着型で製作された。

石神武人(西島秀俊)は帰宅した自室で妻の死体を発見する。ところがそこで鳴った受話器をとると、何も変わらない妻の声が聞こえてくる。混乱する彼のもとに、怪しげな男たちが現れる。危険を察知して逃げる石神は、目の前にいた韓国人女性ジウォン(キム・ヒョジン)の車に乗り込み逃走を図るのだった。

何かの理由で記憶がおかしくなった男の、自分を取り戻す戦いを描くサスペンス。

撮影はほとんど日本、台詞には韓国語が多少混じるものの、出演者も西島秀俊はじめ日本人が多くを占める。そのかわり、キム・ソンス監督以下スタッフは韓国映画人が主力となる。このため日本を舞台に日本人を撮っても、どこか外国映画風に感じられるのはおもしろい。序盤のカーチェイスも、それほど大がかりなことはしていないにも関わらず、邦画よりも緊迫感を感じさせてなかなかよい。これは意外にも日韓共同作業、大最高か!?

──などと思ったのもここまで。韓国と組むと必ず負けるとのマーフィーの法則的なジョークがネット上ではよく語られているが、本作もそのワナにはまった様子。ストーリーが進むにつれて、いろいろな無理が露呈してくる。

とくに、"衝撃の真相"が明らかになってからの流れ。ミステリにとってもっとも盛り上がるはずの部分なのだがここがよくない。ろくなヒントも伏線もなく、唐突に新事実が次々と明らかになる展開に、いったいどれだけのお客さんがついていけるだろう。

そもそも驚きとは、思いこんでいた常識、先入観をひっくり返されたときに感じるものである。今まで言ってなかっただけのことをポン、と目の前におかれても。ああそうだったんだ、初めて知ったよ、で終わりである。

本作はもう少し原作を整理して、切り捨てるべくは切り捨て、何に焦点を当てるかをはっきりさせたらよかった。特にこの映画版は、5日間でタイムアウトというスリル、日韓をまたぐ壮大なストーリーと撮影、そしてどんでん返しの衝撃、の3つが売りのはずである。

ならば、それ以外の要素はばっさり切り捨てていかないと、時間は足りなくなるし見せ場の完成度も下がる。リソースは限られているし、スタッフキャストの意志疎通も十分にはいかないのだから、ここは大胆な割り切りが必要だった。

現実世界同様、日韓コラボを成功させるのはなかなか難しいか。

ゲノムハザード (小学館文庫)
原作小説です。


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