「人狼ゲーム」60点(100点満点中)
監督:熊坂出 出演:桜庭ななみ 太賀

細かいことを気にしなければ結構いける

ヨーロッパ発のトークゲームで、いまや日本の合コンシーンでもブームとなりつつある人狼ゲーム。テレビ番組などでその存在を知った人も多いだろうが、低予算映画にうってつけの素材だと気付いた映画人がいたのだろう。同時期に2本の実写映画が公開される、こちらはその一つ。デビュー作「パーク アンド ラブホテル」(07年)が好印象だった熊坂出監督作品ということで、私も期待して見てみた。

高校2年生の愛梨(桜庭ななみ)は、目覚めると見知らぬ建物の一室にいた。やがて同じ境遇の若者男女計10名が集まってくると、テレビモニターに不気味なメッセージが現れる。それによると、これから彼らは「人狼ゲーム」を行う必要があるらしい。だがこのゲームでは、実際に人狼か村人を「殺す」必要があるというのだった。

人狼ゲームとは、まず最初に各人の役割が記されたカードが伏せて配られる。「村人」の中に紛れ込んだ「人狼」を、全員のディスカッションで見つけ出し処刑せねば、毎晩一人ひとり村人が殺されていく。村人、人狼どちらが最後まで残るか。ある種のチーム戦が魅力の推理ゲームである。

川上亮による同名小説の映画化で、子供同士で殺し合うゲームという点ではバトルロワイヤル的な不健全さも漂わせる。不健全なオトナの一人としては、なかなか面白い企画である。

とはいえのっけから惜しいと思わせるのが、最初の犠牲者の演技、演出。ここは指先の血で予告する必要などなく、唐突にぶっ倒れるほうがショックが大きく効果的である。死体を痙攣させたり、まわりをパニックにさせておけば、自然でさらに良い。この肝心の場面で不自然な挙動となっているところは本作の大きなマイナス点である。

とはいえ、熊坂出監督はもともとB級ホラーなどではない、まともな映画を撮れる監督であるからここから先の心理ドラマはうまく見せる。残酷描写などはソフト目だが、その分、中学生くらいからキャーキャーいいつつ楽しめるだろう。若い子のデートムービーには結構いいと思う。

中盤以降はマリエ役藤井美菜あたりの演技が際立ってきて、元若い子である私のような観客も引き込まれていく。残り人数が減るにつれ、誰が人狼なのか、誰が村人かの推理がやりやすくなる分、バーチャルリアリティ気分も満点である。

もっとも人狼ゲームのだいご味は、サバイバルの恐怖ではなく読み合いの面白さ。そこがこの映画ではバトルロワイヤル的というか、非常に殺伐としたものになってしまっている。そして、各人の個性や背景が伝わる前にバタバタ退場していく展開には物足りない部分もある。

予算規模が段違いな映画版「ライアーゲーム」ほどの徹底した脚本づくりを望むのは酷かもしれないが、素材がいいだけに、もう少し頑張ってほしいなというのは欲張りな願いだったろうか。

会話型心理ゲーム 人狼 (JIN-ROU)
盛り上がるのかな、こういうの。メンバーによる気がする。
人狼ゲーム (竹書房文庫)
原作。


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