「マン・オブ・スティール」75点(100点満点中)
Man of Steel 2013年8月30日(金) 全国ロードショー 2013年/アメリカ/カラー/2時間23分 配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ザック・スナイダー 原案:デビッド・S・ゴイヤー、クリストファー・ノーラン キャスト:ヘンリー・カビル エイミー・アダムス マイケル・シャノン ケビン・コスナー ダイアン・レイン

米映画の流行をつかんでいる

「ダークナイト」(2008)のクリストファー・ノーランが製作し「ウォッチメン」(2009)のザック・スナイダー監督する。アメコミ映画に社会派の香りとダークな世界感を採用したこの2人がスーパーマンを実写にする。おのずと骨太な映画を期待してしまうのは当然だ。

クリプトン星で生まれた最後の赤ん坊は、故郷の滅亡を前に父母の手により地球へと送られた。カンザスの心優しい夫婦に拾われた赤ん坊は、やがてクラーク(ヘンリー・カヴィル)の名で成長する。超人的なパワーをどう使うべきか、自分探しの旅に出たクラークが、激しい運命に翻弄されやがて得た解答とは。

「マン・オブ・スティール」は、最近のハリウッドの流行を押さえた作りになっている。例えば攻撃されるのはアメリカ本土。今年日本公開されたホワイトハウス映画2本をはじめ繰り返されているモチーフで、これは自国がテロ攻撃される観客自身の不安を表している。

そして主人公の敵は、もともとは同胞であった人物。これは「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012)でも描かれたアルカイダや、タリバンとの関係性を彷彿とさせる。

地球育ちのスーパーマンは地球の空気や光がパワーの源。地球の環境でなければ、100%の力を出すことができない。ギリシャ神話ならさしづめ太陽神といったところだが、今風に言えばソーラー駆動のヒーローというわけだ。そんな彼が誕生した惑星クリプトン(放射性物質)は、直後に化石燃料の堀りすぎで滅びてしまう。これぞまさに反原発ムービー。スーパーマンは、アメコミ界の菅直人ということか。

大人向けのビター風味に仕上げてあるので、長い映画ながら飽きることはないが、肝心のアクションの見せ場は特にすぐれているわけでもない。もちろんハリウッドきっての映像派監督だから派手ではある。だが、たとえば最後の戦いなどは冗長にすぎる。ドラゴンボールのスーパーサイヤ人同士の戦いみたいなもので、同じ動きの殴り合いの繰り返し。どちらが攻撃をくらっても、勝つも負けるもないといった無敵ぶり。なにか工夫が必要だろう。

キャストの中では、父親役のケビンコスナーがおいしいところを持っていく。若きクラークケントが、その力を善に使うか、悪に使うかの別れ道を命掛けで導くシーンは大きな見どころとなる。この、スーパーパワーは善にも悪にも転ぶ。それを選択するのが大事というテーマは、唯一の超大国となったアメリカ人の心には強く響くものであろう。

未知なる異星人の攻撃も一瞬で理解する地球の科学者等、御都合主義も多々見られるが、マッチョで若々しい新スーパーマンは、現在のハリウッド映画の平均点は軽くクリアしているだろうと思う。

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高いだけあって渋い。
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すでになきものとされてしまったね。


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