「31年目の夫婦げんか」65点(100点満点中)
HOPE SPRINGS 2013年7月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ他にて公開 2012/アメリカ/100分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:関 美冬 配給:ギャガ
監督:デビッド・フランケル 脚本:バネッサ・テイラー 音楽:セオドア・シャピロ キャスト:メリル・ストリープ トミー・リー・ジョーンズ スティーヴ・カレル

熟年のセックスレス問題を赤裸々に描く

長年連れ添った夫婦の愛が枯れていくのは万国共通だが、それに対する回答は各国・各民族で大きく異なる。中でも「31年目の夫婦げんか」をみると、アメリカ人の特異な考え方がよくわかる。

結婚31年目を迎えたアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)は、妻のケイ(メリル・ストリープ)から突然滞在型の結婚カウンセリングを受けたいといわれて戸惑う。そりゃ夜のお勤めはめっきり減ったが、それでも二人の絆は失われていないと彼は思いこんでいたのだ。だが半ば強引に怪しげなカウンセラー(スティーヴ・カレル)の元に連れられて行った彼は、そんな自分の認識が甘かったことをやがて認識させられる。

ほのぼのしたタイトルが付いているが、何のことはない、これは熟年夫婦のセックスレス問題に対する傾向と対策。若い世代の観客にとっては、そうとう過激で恥ずかしい現実を描いた作品である。

なにしろ妻にとって、セックスがあるかないかは大事だ。時折でも求められれば自らの魅力を再確認することにつながり、自信を維持できる。だが半年、1年となにもなかったら……。単なる性欲解消ではない、自らの存在価値・意義の有無にまで関わってくる重大事、となる。

これが男性なら、セックスは外で=外食主義になることで、自らの性欲と何の問題もなくつきあっていけるのだから、女性というのは気の毒な存在である。もっとも最近は外食好きで、ヤグってばかりの人妻も少なくないようだが。

それはともかく、こうした問題に直面したときのアメリカ人女性のはっちゃけた行動が本作の見所である。なにしろそれは、我々日本人では到底考えられないようなものばかりなのだから。

滞在型のカウンセリングなんぞに行くのもそうだが、それよりなにより、セックスレスをなんとしても解消しようとする妻の意気込みに圧倒される。30代ならいざ知らず、ふたりはもう熟年である。ないならないでいいじゃないか、うけいれようよ、とはならない。そこがまずは驚きである。

たとえば慎重にムードを作り、古女房に恋した頃の自分を思いだし、奮い立たせてヤろうとしてもダメだったとしよう。要するにもう妻じゃ性的に興奮しないということだが、それを「悪」とし、無理矢理でも興奮するように変わりたいと考えるところが、まさにアメリカ的といえる。

だが、この映画で描かれるその回答に説得力はあまりない。というより、こうして綺麗ごとに逃げるしかないのがアメリカ人の限界というべきか。こちらとしても、この難題に答えがあるなら是非みてみたかったのだが、進むべき道はもう残されているようには思えなかった。アメリカ人でも無理なら、もはやフランス人にでも聞くしかないのか。この映画の終盤は、私にはファンタジーに見える、それがせつない。

無いなら無いでもいい。日本人は比較的そう思う人が多い。だが彼らは、それなら関係を終わらせようと考える。アメリカ人女性と結婚する人たちは大変だと思わざるを得ない。

若い頃は何かとやっかいな性欲だが、それは男女にとっての貴重な潤滑油であることがよくわかる。いや、むしろそれこそが男女の愛の本質なのかもしれない。油がなくなれば動きは鈍り、若い頃できたことが簡単にはできなくなる。果たしてこの問題に答えはあるのか。さあ世界の映画監督よ、本作が挑んだこの難テーマをぜひフォローせよ。

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