「LOOPER/ルーパー」80点(100点満点中)
Looper 2013年1月12日(土)より丸の内ルーブル他全国ロードショー 2012年/アメリカ/カラー/118分/配給:ギャガ、ポニーキャニオン 提供:ポニーキャニオン、ギャガ
監督・脚本:ライアン・ジョンソン 出演:ブルース・ウィリス ジョセフ・ゴードン=レヴィット エミリー・ブラント

すぐれた大人SF

時間移動ものSFには佳作が多い。「バタフライ・エフェクト」(04)、「時をかける少女」(06)、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(07)など、内外に多くの作品がある。過去の改変が未来に影響を与えるタイムパラドックスとは、一見絵空事のように思えるが、実際はいわば現代を生きる者の共通認識を象徴している。誰もが無意識にそう考えて今を頑張って生きているからこそ、映像の形でそれを具現化した時間移動ものSFにすんなり共感できるわけだ。

「LOOPER/ルーパー」はそんな暗黙のルールを、ユニークな設定に生かした一本。おそらく以下に紹介するあらすじを読んだだけでも思わず見たい!となるはずだ。

完璧な管理社会である2074年では、マフィアたちもそう簡単に邪魔者を消すことができなかった。そこで彼らは使用が禁止されているタイムマシンを入手する。この発明品はいまだ不完全で、30年前の過去にしか行けない一方通行。だがマフィアにとっては、邪魔者を縛り上げてこれに乗せ、他の時代で殺害すれば完全犯罪となる。彼らは30年前にエージェントを送り込みルーパーと称する殺し屋集団を組織させ、その時代の闇組織に殺害を依頼することにした。

さて、主人公はその2044年のルーパーの一人(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。殺人といっても話は簡単。目の前にターゲットが現れた瞬間、ズドンと一発。ゴルゴ13も真っ青の成功率100%である。基本的には異世界の住人を殺しているわけだから、さほどの罪悪感もなさげだ。

ところが彼が今日も流れ作業で銃を構えていたところ、なんと目の前に現れたターゲットは30年後の自分(ブルース・ウィリス)だった。さあ、アナタならどうする?

30年後からやってきた自分に髪の毛がなかったことがショックだったか、主人公氏は思わず男を取り逃がしてしまう。そこからがこの映画の本題。未来の自分にはある目的があり、主人公はそれを阻止するとともに、相手を殺害しなくてはならない状況に追い込まれる。

いったいどういうストーリーにすればそんな展開になるのかと思うだろうが、それは本編を見てのお楽しみ。この結末はなかなか哲学的で、あらゆる諸問題に通じる対立の構図となっているように思う。強硬派と穏健派。目的は同じでも手段が違うが、どちらを私たちは選ぶべきなのか。心情的にはこっちだが、しかし論理的にはこっちのほうが正しい。ああ、なんと悩ましいことよ。

そんな、現代に通じるテーマ性を感じるあたりが優れたSFの証明みたいなものだが、単純にここで描かれる未来世界のアイデアも見ていていろいろと面白い。

たとえば、未来から送られてくるターゲットには、未来マフィアからの報酬として金や銀の延べ棒が括り付けられてくるが、なるほど30年間のインフレデフレに左右されない報酬となると貴金属かと感心させられると同時に、投機マネーで高騰してんじゃねーのなどと思ったりもする。

このほか、随所にハイテクとローテクが混在する地に足の着いた世界観が描かれているが、そういう見た目がストーリーにも荒唐無稽さを感じさせない効果を上げている。これが、サラリーマンがウェットスーツみたいなピタピタ服をきて通勤しているようなビジュアルだったら、思わずバカバカしくなってしまうところだ。

そこそこ頭を使うものの、それほど難解でもない。正月明けにみるにはほどほどの、やや知的な大人SF。ただし残酷なシーンも多々あるので、子供たちとお出かけになるような作品ではないので要注意。序盤に登場する、斬新な拷問シーンの恐怖感は、それ自体がその後のスリルを生む伏線にもなっていて見事、の一言に尽きる。勇気のある方はぜひ見てほしい一本である。

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なんとなくこの傑作を思い出しました。雰囲気が似ているというか。
BRICK‐ブリック‐ [DVD]
このルーパーのアイデアに10年の製作年月をささげたライアン・ジョンソン監督&脚本作品。高校を舞台に殺人事件が起こります。ミステリ好きの作る映画は面白いね。


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