「神秘の法」20点(100点満点中)
2012年10月6日(土) 全国公開 2012年/日本/カラー/119分/配給:日活
製作総指揮・原作・原案:大川隆法 監督:今掛 勇 音楽:水澤有一 脚本:「神秘の法」シナリオプロジェクト 総合プロデューサー:本地川瑞祥、松本弘司 声の出演:子安武人 藤村歩 平川大輔

「幸福の科学」色をもう少し抑えたら

日本という国には色々と構造的問題があるし、取り巻く国際情勢も一触即発……とまでは言うまいが、話のネタには事欠かぬ状況である。

なのに、それを映画のテーマにする人がいない。タブーやしがらみだらけなのは理解できるものの、まともな社会派エンターテイメントを望む人々にとっては欲求不満が募るばかりだ。

だが、アニメーションながらそれらを打ち破る、強烈な社会批判スペクタクルが登場した。「神秘の法」がそれだ。

202X年、東アジアの大国でクーデターがおこり、独裁帝国ゴドムが誕生する。アメリカはすでに凋落しており、この帝国の圧倒的軍事力前にはもはや無力。彼らの領土的野心に対抗しているのは、正義の秘密結社ヘルメス・ウィングスだけとなっていた。だが、ゴドムは彼らの拠点を次々と攻撃。壊滅的被害をこうむる中、世界平和のカギはそのメンバーで予知能力をもつ獅子丸翔(声:子安武人)が握っていた。

日本映画界唯一の国際政治エンタテイメントが幸福の科学というのだから思わず頭を抱えてしまうが、実写話題作「ファイナル・ジャッジメント」(12年)に続く最新作というわけで、早めに試写に出かけてみた。

毎度おなじみ微妙な空気の受付(宣伝会社)で無言なやりとりをすますと、客席はたったの4人。切ない注目度の割には豪華すぎる冊子型パンフレットに圧倒されながら、上映開始を待った。

さて、あらすじにある帝国ゴドムとは、いうまでもなく膨張を続ける中国のこと。アメリカに代わり覇権国家となった彼らに、わが日本はどう対峙したらいいのかを考えさせれる近未来シミュレーションである。

ただ、この部分を掘り下げてくれれば良かったのだが、逆に宇宙人まで登場する際限のないスケール肥大化によって、収拾がつかなくなってしまった。宇宙人だって利用する狡猾な中国人、なんてのは結構笑える皮肉と思うのだが、そうしたシニカルな視点はなく、どこかの教祖さまに似たイケメン主人公が強引にコトをおさめてしまうあたりがいつもながらの展開。ここは工夫の余地があろう。

製作から原作原案とこなすマルチな大川隆法氏には、もう少し教団向けカラー、あるいは布教色を抑えてみてはと提案したい。資金調達の不安がない彼らはきわめて恵まれた制作環境にあるのだから、得意の保守思想を押し出すなり、尖閣騒動のような現実のニュースを取り込んでみたりと過激なシナリオを作ったらいい。それを、この作品の悪役のように自ら「天才科学者」などと称する失笑なキャラものではなく、現実感のある世界観を維持しつつ展開させれば、意外といい映画になるのではないか。

今から作るならやはり尖閣諸島問題が良いだろう。マスコミに出まくって世論を操る地上げマスターの弟を狂言回しに、虎視眈々と領土問題棚上げ密約を反故にしようと狙う超大国ゴドム、まんまとそれに引っかかり購入募金まで始めるピエロな首都知事、善後策に右往左往する官僚の傀儡首相。すべての動きを満足そうに眺めるアメリカ軍産複合体。

関係者は以上をたたき台に、白金のお城のような本部で今すぐ次回作の協議に入るように。

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制作意図とか読むと、なるほどとか思えちゃうから怖い。
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