「アベンジャーズ」97点(100点満点中)
MARVEL'S THE AVENGERS 2012年8月14日(火)3D/2D同時公開(TOHOシネマズ日劇他)デジタル3D 2012年/アメリカ/カラー/2時間23分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
監督:ジョス・ウェドン 原案:ザック・ペン、ジョス・ウェドン 脚本:ジョス・ウェドン キャスト:クリス・ヘムズワース マーク・ラファロ クリス・エヴァンス ジェレミー・レナー ロバート・ダウニー・Jr スカーレット・ヨハンソン

10年に1本級のお祭り

2005年から始まった、ハリウッドの大プロジェクト「マーベル・シネマティック・ユニバース」の集大成「アベンジャーズ」は、深読み派、能天気派どちらにとっても紛れもない大傑作であった。

国際平和維持組織シールドが保管する四次元キューブが、邪神ロキ(トム・ヒドルストン)に奪われた。シールド長官ニック(サミュエル・L・ジャクソン)は、この緊急事態にアイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)を始めとするスーパーヒーローのオールスターチーム「アベンジャーズ」を結集させる が、集まったヒーローたちはまるで協調性がなく、先が思いやられる状況であった。

日本では「インクレディブル・ハルク」(08年)から続くマーベルのアメコミ映画シリーズの最新作。一つ一つすべての作品を楽しみながら待っていたファンにとっては、いよいよ念願のお祭り映画である。なにしろそれぞれ100億円単位の大作の主人公が勢ぞろいするのだからたまらない。

次回作も彼以外はありえないとまでファンに絶賛されているジョス・ウェドン監督は、全キャラクターに見せ場を与えるゴージャスな演出。ほとんど便利屋扱いのアイアンマンや、リーダー格のキャプテン・アメリカ、お尻担当ブラック・ウィドウ、そしてその他の雑魚スターなど、どのファンもそれなりに満足して帰れるようになっている。

中でも目を見張る活躍を見せるのが日本でも大人気のハルクで、その強さときたらほとんど無敵状態。 残念ながら「インクレディブル・ハルク」(08年)で演じたエドワード・ノートンは降板、主要キャラ の中で唯一のキャスト変更であったが、それが悔やまれるほどのフィーチャーぶりであった。

もっとも盛り上がるのが、敵の圧倒的な強さを見せられ、こりゃヒーローでも無理だわと観客が絶望しかけたころ、変身したハルクが最強の敵の前に立ちふさがり正拳付きをくらわす場面である。プロレスでいえば散々セールしたあとに会心の延髄斬りを叩き込む、そんな大喝采の空気が映画館を駆け抜ける。アメリカだったらここで拍手が巻き起こるに違いない。

とにかく痛快で、ワクワクして、何も考えずド迫力映像を楽しめる、そんな愛すべき無駄遣いを堪能したいハリウッド映画ファンにとってこれ以上のものはない。これを見れば日常の嫌なことを少なくとも2時間23分間は忘れていられる。

だがしかし、この映画がそこで終わらないのは、こんなノー天気感の中にも、深読み派をうならす味つけを施しているところである。

例えば、誰もが気づくことだがアベンジャーズというのは、ようするに現実でいう多国籍軍のこと。キャプテン・「アメリカ」率いるこのオールスターチームは、それぞれが思惑を胸に秘め、ときに勝手なことばかり言っているので、一見チームに見えても内情は分裂状態。まさに現実の国際政治そのものである。

さらにこの映画に出てくるアメリカ政府は、「大量破壊兵器」の探索どころか自らそれを内緒で作っているという、ナイスなブラックジョーク設定。それをニック・フューリーの言葉を借りてさりげなく自己弁護するシーンまで準備される。

だが最近のアメリカ人はそうした自分らの傲慢ちきな態度が世界中で嫌われているのを知っているから、ここではソーが説得力ある反論をすることで、ガス抜きすることも忘れない。どちらにも一理ある、というところに議論を落ち着かせる。

強力な軍事力=防衛力が、戦いや強敵を生み出すとのテーマは、ただいま公開中の「ダークナイト」シリーズの2作目において顕著なテーマであった。その議論の続きがここでちらりと行われているわけである。このシーンは、社会派なお客さんならきわめて興味深く見ることができるだろう。

エンドロールの後には、アメリカで社会問題にもなったあるものを食べるシーンが用意されている。それだけ騒ぎになったのもわかる楽しいおまけであり、思わず2点ほど追加したくなった。

この映画を楽しむためには、これまでの関連作品すべてを鑑賞することが必須だが、それだけの手間をかけてでも見る価値がある。

間違いなく現時点で本年度ナンバーワンの外国映画であり、すべての国の映画の中でもこの夏の最高傑作である。「日本よ、これが映画だ。」との傲慢なキャッチコピーにも偽りはない。可能な限りよい設備の劇場で楽しむことをお勧めしておく。

 
マーベル・アベンジャーズ事典 (ShoPro Books)
とりあえず基本の字引。映画を楽しむため、だそうです。
アベンジャーズ:ハルク・ウェーブ! (MARVEL)
これを機会にアメコミの雰囲気を味わってみたい人に。
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