「シャーク・ナイト」60点(100点満点中)
Shark Night 3D 2012年7月14日(土)TOHOシネマズ日劇モンスターナイトカーニバル第一弾 2011年/アメリカ/カラー/90分/配給:ポニーキャニオン
製作:クリス・ブリッグス 監督:デヴィッド・R・エリス キャスト:サラ・パクストン アリッサ・ディアス クリス・カーマック キャサリン・マクフィー
海開き前にぴったり
最近は自然派ドキュメンタリーが人気だが、「シャーク・ナイト」は46種類のサメが見られるというの が売りのサメ映画。ただし、ネイチャードキュメンタリー好きの純粋な女のコを連れて行くと、間違い なくアナタとの関係は崩壊する。
大学のアイドル的存在サラ(サラ・パクストン)に誘われ、男女6名の友人たちは彼女の湖畔の別荘へ とやってきた。さっそく湖で遊び始めた彼らだが、信じがたいことにひとりがサメに襲われる。なぜ湖 にサメが?! パニックに陥るサラたちは、やがて恐るべき秘密を知ることになるのだった。
イケメンと美女の「友達」数名が湖畔に集まり遊び始める。まさに、絵にかいたような死亡フラグであ る。どこの国でもホラー映画を作ろうなんて物好きは非モテ男と相場が決まっているので、幸せな若い 男女が集まると7割くらいの確率でサメに食われることになっている。
とはいえ最近は携帯電話というやっかいな小道具があるのでそれで助けを呼べばいいのだが、この映画 の場合は都合よく別荘の周りだけ電波が届かないという、ネットの国士たちが聞いたらデモを始めるレ ベルのごり押しを通してきた。
その後は同じく非モテな観客の期待通り、ひとりまた一人とバラエティー豊かな食われ方で死んでいく わけだが、これまでのサメ捕食ムービーとの差を見せようというのか食われる人間が信じられない力で 左右に振られたり、絶対に追いつけないような速度の船にでも攻撃を仕掛けるなど、絶望的な描写が目 につく。
主人公側が、せっかく銃を手にしても使い方がわからず結局役に立たなかったりなど、バカすぎる展開 も観客をイラつかせる。だからこそ、意外なやつが反撃をくらわしたりすると爽快感倍増となる。ホ ラーファンの心理をうまくつかんでいる。
監督のデヴィッド・R・エリスは「セルラー」(2004)や「デッドコースター」(2003)など優れたスリ ラーの作り手であり、「マトリックス リローデッド」(03年)の高速道路アクションを作り上げた映 像派でもある。それが同じくサメホラーの「ディープ・ブルー」(1999)などで知られる海洋生物のアニ マトロニクス専門スタッフと作り上げるのだからクォリティはお墨付き。
もっとも売り物の46種類のサメは、予算の都合か6種類ぐらいしか出てこなかった気もするが、細かい ことは気にするまい。
餌となるのはもちろん人間だが、ナイスバディの美少女がリアルなCGなどを駆使して食いちぎられる姿 はたいへん気持ちが悪い。サーファー復帰はとても無理な食われっぷりで、ダイビングが趣味の方など は、この映画を見るとひとつ生きがいを失うことになるだろう。
なお、単なる悪趣味なB級ホラー映画だというのに、犯人がある人物に説教する場面では、人間の善悪 についてやたらと奥深いうんちくをたれるなど、無駄に哲学的テーマを取り込んでいるのも魅力。最後 まで飽きることはない。
惜しいのは、犬関連など伏線をもっとしっかりさせておけばさらに盛り上がっただろうという点。海開 き前に心の準備をするにはちょうどいい按配のホラー映画なのだが、結局、仕事がどこか雑なのである。