「タイタンの逆襲」45点(100点満点中)
Wrath of the Titans 2012年4月21日(土)丸の内ピカデリー 他 全国ロードショー 2012年/アメリカ/カラー/99分/配給:ワーナー・ブラザース映画
パワーダウン続編
前作「タイタンの戦い」(10年)は、なかなかいい映画だったが3D版がイマイチという弱点があった。もっとも3Dは鑑賞する劇場や席の位置によって印象が大きく変わるもの。そこで今回私は、なるべく良い視聴環境で試してみようとこの続編を都内のIMAX 3D劇場で鑑賞してみた。
全能の神ゼウス(リーアム・ニーソン)と人間の間に生まれた半神の勇者ペルセウス(サム・ワーシントン)は、怪物クラーケンを倒したのち、一人息子と穏やかな日常を送っていた。だがそこにゼウスが現れ、現在天上界のパワーバランスが崩れ、ゼウスらが封じ込めていたクロノスの復活が近いと告げる。人間として、息子と平和な日々を過ごしたいペルセウスはゼウスからの援軍の頼みを断るが、それが取り返しのつかぬ悲劇を招いてしまう。
この映画は冒頭のキメラ戦、クライマックスのクロノス戦ともに重要な戦いの見せ場が昼間の屋外におけるシーンなので、林立するデジタル3Dの中でももっとも画面が明るいとされるIMAX 3Dが適しているだろうと思って鑑賞したのだが、その期待は空振りに終わった。
確かに前作よりも立体視を意識した演出が増えている印象だが、新味も盛り上がりにも欠け、これまで多数公開された3D映画の中では平均値をやや下回るといったところ。IMAXでこれなら通常の3D劇場ではあえて3Dの追加料金を支払う意味は薄いだろう。
この手のファンタジーによくある展開として、大ボスを倒すためにはアイテムが必須で、どうやらそれを入手するには山奥の仙人みたいなオッサンを訪ねる必要があり、そこに行くためにはサイクロップスのいる森を通らないといけなくて……といった流れを本作もたどる。
それが主人公たちパーティーの絆を深め、経験値を上げ戦闘能力も高めるという伏線になっているのがストーリーテリング上の目的となるわけだが、本作はそれがうまくない。唐突に表れる障害を、行き当たりばったりな戦術でなんとなくクリヤーしていくだけなので、物語の流れに緩急がない。アイテム探しのハイキングを延々と見せられるのは退屈で、完全に中だるみしている。
前作には、往年の名作をリメイクする意気込みが作り手にもあることが感じられた。変化球ではなく、困難に堂々と立ち向かう男たちを描くシンプルな演出が観客の男心をかきたてた。本作にはその「熱さ」が足りない。劇場隣の温泉施設の水着バーデゾーンのようなぬるま湯なのである。もっと、思わず立ち上がりたくなるような熱い展開がほしい。
ただ、なかなか良かったのはクリーチャーの造形で、一つ目巨人の愛嬌ある凶暴さや、迷宮名物ミノタウロスのスピード感は新鮮である。その魅力を生かせぬほど戦闘演出が単調であっけないのはいただけないが。
クロノスの放つ魔物の見た目の恐ろしさもかなりのもので、あんなものが目の前に現れたら絶望間違いなしである。私が兵士だったら光速で踵を返すところだが、この映画の古代兵士は一人も逃げ出さない。ペルセウス以上に勇敢で、思わず尊敬。我が家の警備員にスカウトしたい。
結論として「タイタンの逆襲」はかなりパワーダウンした続編。もう少し中盤をコンパクトにすれば、化け物たちの見た目は恐ろしいとはいえ小学生くらいにもすすめられるところだったが実に惜しい。